Revolution in Time#
Revolution in Time: Clocks and the Making of the Modern World は、時計を必要とする社会、時を正確に測る技術、時計を作る産業を結び付けたデイヴィッド・S・ランデスの歴史書である。中心にあるのは、時計がどのように進歩したかとともに、人がなぜ時計を求め、それによって生活や生産がどう変わったかという問いである。1 2
時計を三つの方向から見る#
本書の三部構成は、時計を文化・技術・経済の接点として読むための枠組みになっている。フランス語版出版社の目次でも、時間を求めること、時を保つこと、時計の製作という三つのまとまりと、クォーツ革命に至る構成を確認できる。2
なぜ時計を必要としたのか#
第I部に当たる公開抜粋で、ランデスは昼夜や季節に従う生活と、機械によって均等に区切られる時間を対比する。日時計への不満を語る古代の文章を導入に使い、自然の周期を知ることと、時刻を使って人間の活動を組み立てることの違いへ話を進める。ペンシルヴェニア大学が公開する2000年版からの抜粋では、時計の仕組みより先に、時計を欲する社会の問題が提示されている。1
この問いは、中世ヨーロッパの機械時計の成立と、中国の時間測定との比較につながる。ただし、時計を必要としたことから、特定の機構が発明された経緯まで直ちに証明できるわけではない。この点は後述する書評でも争点になっている。2 3
精度はどのように高められたのか#
Henry B. Friedによる1984年の専門誌書評は、本書が振り子、ヒゲゼンマイ、航海用時計をめぐる人物と論争を扱うことを具体的に伝えている。ヒゲゼンマイとは、時計内部で往復回転するテンプに復元力を与える細いばねである。振り子やテンプの規則的な運動を時計へ取り込む技術を、発明者の名前だけでなく、航海や精度への要求とともに位置付ける構成が読み取れる。4
同書評によれば、巻末にはDavid Penneyの図による脱進機の説明もある。脱進機は、動力を少しずつ解放しながら振動体へ力を補う装置である。ただし、以下の紹介はその図版全体を検証したものではなく、掲載内容についてのFriedの記述に基づく。4
誰が、どのように時計を作ったのか#
第III部では、個々の時計の精度から、職人組織、製造の分担、国際競争へ視野が広がる。フランス語版の紹介は、スイス・ジュラの工房から米国の工場、アジアの生産拠点へ及ぶ範囲を示す。Friedも各国の時計生産を扱う表に言及している。時計を完成品として見るだけでなく、作り手や製造組織の変化から調べるための本でもある。2 4
著者と時計研究の接点#
ランデスはハーヴァード大学で歴史と経済学を研究した。2001年に本書と同名の講演を開催したペンシルヴェニア大学も、時計の文化・技術・製造を横断する研究として紹介している。1
一方、時計との関係には収集の経験もあった。François Sigautの書評は、原著の序文に、Carlo Cipollaの古い打鐘時計への関心や、1972年にパリで同種の時計を求めた経緯が語られていると紹介する。これは序文を読んだSigautによる記述であり、経済史研究と古時計・専門家の世界との接点を示している。3
書評と後続研究における論点#
Friedは『Horological Times』で、文化的背景から機構、生産統計までを扱う広がりを評価した。4 他方、Sigautは1989年の『Annales』で、機械時計の歴史を描く成果を認めながら、二つの問題を指摘した。第一に、修道院の祈りの時刻への需要だけでは、機械時計の発明過程を説明できないこと。第二に、装飾的な時計や玩具のような機構も市場と専門職人を育てる役割を持ち、精度向上から外れた寄り道として扱い切れないことである。3
産業史の解釈にも後続の議論がある。S. R. EpsteinとMaarten Prakは2008年のギルド研究の序論で、本書の職人組合に対する否定的な記述を、裏付けの乏しい一般化の例として挙げた。両者は、ギルドが訓練、複雑な生産の調整、取引上の情報の偏りを減らす働きを持った可能性を検討している。ギルドとは、同業の職人らによる組織である。5
これらの議論を踏まえると、時計の需要、技術上の可能性、職人組織の働きは、相互に関係しながらも分けて確かめるべき論点になる。本書の歴史解釈と、後続研究で検討されている事柄を区別して参照できる。3 5
書誌・版と翻訳#
原題は Revolution in Time: Clocks and the Making of the Modern World、著者表記はDavid S. Landes。原著の言語は英語である。6
| 刊行物 | 確認できる書誌と違い |
|---|---|
| 1983年の原著 | Belknap Press of Harvard University Press。CiNii Booksは前付xviii頁、本文482頁、別丁図版40頁と記録する。ISBN 0-674-76800-0、ペーパーバックは0-674-76802-7。 |
| 2000年の米国改訂増補版 | Harvard University Press。ISBN 0-674-00282-2/978-0-674-00282-1。Google Booksは第2版・改訂、518頁と記録し、第2版序文の存在を示す。 |
| 2000年の英国版 | Viking、London、第2版。ISBN 0-670-88967-9。CiNii Booksの記録は前付xxiv頁、本文518頁。米国版とは出版社・ISBN・前付の表記を区別する。 |
| 1987年のフランス語訳 | L’Heure qu’il est: les horloges, la mesure du temps et la formation du monde moderne。Gallimard、622頁。訳者はPierre-Emmanuel DauzatとLouis Évrard、ISBN 2-07-071139-0。 |
| 2017年のフランス語版 | Les Belles Lettres、640頁、2017年8月21日刊。同じ二人の訳者を表示する。EAN 9782251446578。 |
書誌の根拠は、1983年版がCiNii Books、米国2000年版がGoogle Books、英国2000年版がCiNii Books、1987年仏訳がフランス国立図書館、2017年仏語版が出版社の記録である。2 6 7 8 9
米国2000年版の紹介文は、新たな序文、中世・近世の時間測定研究を受けた更新、時計の電子的な多機能化への言及を挙げる。これは紹介文で確認できる増補の方向であり、初版との全ページ比較による改訂一覧ではない。7 また、2017年仏語版を、刊年だけから英語2000年増補版の翻訳と見なすことはできない。引用する際は、実際に用いる版の章・頁を確認する必要がある。
参照先と確認範囲#
国内の所蔵はCiNii Booksの1983年版・英国2000年版の記録から探せる。書誌レコードは本文のデジタル公開を意味しない。6 8 本文の一部は、ペンシルヴェニア大学の講演案内に2000年版からの抜粋として公開されている。1
この紹介で直接確認した原著本文は、その公開抜粋である。各部の範囲は出版社の目次・紹介、技術的な収録例はFriedの書評、歴史解釈の論点はSigautの書評とEpstein・Prakの研究で照合した。原著全章、脱進機図版一式、生産統計の原データ、各版・翻訳の全文対照は確認範囲に含めていない。
購入先#
以下は1998年再刊の英語ハードカバー版(ISBN 9780760710746)の商品ページである。上で紹介した2000年の米国改訂増補版(ISBN 9780674002821)とは区別する。
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参考文献#
- University of Pennsylvania, Wolf Humanities Center, “Revolution in Time”, 2001年11月14日の講演案内・2000年版からの公開抜粋。閲覧日:2026年11月7日。
- Les Belles Lettres, L’heure qu’il est, 2017年版の書誌・紹介・目次。閲覧日:2026年11月7日。
- François Sigaut, “David Landes, L’heure qu’il est. Les horloges, la mesure du temps et la formation du monde moderne”, Annales. Économies, Sociétés, Civilisations, 44巻6号、1989年、1554–1556頁。閲覧日:2026年11月7日。
- Henry B. Fried, “Book Review: Revolution in Time”, Horological Times, 8巻3号、1984年3月、30–31頁。閲覧日:2026年11月7日。
- S. R. Epstein and Maarten Prak, “Introduction: Guilds, Innovation, and the European Economy, 1400–1800”, Guilds, Innovation, and the European Economy, 1400–1800, Cambridge University Press, 2008年、特に1–4頁。閲覧日:2026年11月7日。
- 国立情報学研究所、CiNii Books: 原著1983年版、NCID BA00635436。閲覧日:2026年11月7日。
- Google Books, Revolution in Time, 2000, 米国第2版の書誌・紹介・部分目次。閲覧日:2026年11月7日。
- 国立情報学研究所、CiNii Books: Viking 2000年版、NCID BA49154578。閲覧日:2026年11月7日。
- Bibliothèque nationale de France, L’Heure qu’il est, Gallimard, 1987, FRBNF34975064。閲覧日:2026年11月7日。