Traité de construction horlogère:時計を計算し、設計へつなぐ技術書#
Traité de construction horlogère は、機械式時計と電子式時計について、作動の理論から寸法の計算、部品の配置、製造を見据えた設計までを扱うフランス語の技術書である。Michel Vermotらの共著で、2011年に初刊された。時計の仕組みを知るだけでなく、その仕組みを具体的な製品へどう組み立てるかを主題にしている。1 2
書誌と版を区別する#
| 項目 | 確認できる内容 |
|---|---|
| 原題 | Traité de construction horlogère |
| 著者 | Michel Vermot、Philippe Bovay、Damien Prongué、Sébastien Dordor、Vincent Beux(第2版出版社表示) |
| 編集調整 | Pascal Winkler |
| 初刊 | 2011年、Lausanne、Presses polytechniques et universitaires romandes(PPUR) |
| 紹介対象 | 2011年版・2021年第2版の書誌と、出版社公開本文・目次 |
| 言語 | フランス語 |
| 初刊のISBN | 978-2-88074-883-8 |
| 第2版のISBN | 978-2-88915-424-1 |
スイス国立図書館の2011年の全国書誌は、前付XV頁と本文1116頁、CD-ROM一枚を記録する。フランス国立図書館(BnF)の2021年第2版もXV・1116頁で、出版社は同版の刊行日を2021年7月15日としている。1 3 4
同じ頁数であっても、改訂箇所が同一という意味ではない。ここでは二つの版の全頁を比較していないため、章ごとの改訂量や追加内容は断定しない。初刊の付属媒体と、現在出版社が案内するダウンロード資料も区別して参照したい。1 3 5
理論、振動、設計、電子回路を結ぶ#
出版社の目次では、内容は四つのまとまりに分かれる。3
| まとまり | 取り上げる問題 |
|---|---|
| 機械の基礎理論 | 単位、動力、歯車による伝達、脱進機、機械式時計の振動子 |
| 振動子の詳しい理論 | 外乱の影響、同期、ひげぜんまい、アンクル脱進機 |
| 機械の設計 | 計算と構成、脱進機の作図、自動巻き、工業化、ケースなどの外装 |
| 電子式時計の理論 | 電源、振動子、集積回路、変換器、表示 |
振動子は、周期的な運動を時刻の基準に使う部分である。機械式時計では、てんぷとひげぜんまいがその役割を担い、脱進機が歯車の回転を刻みながら振動を支える。本書はこの原理の説明と、歯車や部品を実際に配置する設計を別のまとまりとして扱う。専門語を知るだけでなく、力学や計算、図面を行き来する目的の本である。2 3
出版社が掲載した本文では、電子式時計も取り上げながら機械式時計に大きな比重を置く理由を、スイス時計産業の技術と人材育成に結び付けて説明している。これは本書側が示す成立の背景であり、時計の全分野を同じ分量で説明するという約束ではない。2
公開本文で見る設計の進め方#
最初に仕様と制約を整理する#
出版社の公開本文「Etude de la construction」は、新しい時計の設計を、技術・費用・外観の制約を伴う問題として説明する。構想を図面にする前に、特許などの技術資料と市場の資料を調べ、要求を具体化する段階を置く。2
時計の外形、必要な精度や信頼性、原価、追加機構などの要求に対して、設計者が決める部品の材質や寸法、振動数、持続時間がある。原文は、これらを整理してから配置や製作図へ進む。図面も全体図だけで終わらず、検査・加工の図面や部品表までつなげる。この例からは、作動原理と製造の条件を合わせて考える本だと分かる。2
歯車の配置は、針の位置と厚さにも関わる#
公開本文では、ぜんまいを収めた香箱から脱進機へ動力を伝える歯車の列について、分針・秒針をどう駆動するかで配置を分ける。針を動かす歯車が主な動力経路にある場合と、その経路から枝分かれする場合とでは、歯の隙間による針の遊びの扱いが変わる。2
配置の検討では、上から見た図と断面図を併用し、歯車同士や軸との干渉を確認する。針の位置を決めれば輪列の置き方が制約され、厚さや香箱に使える空間にも影響する。公開されている具体例は、見た目の配置と機械の効率を別々に決められないことを示している。2
計算資料が実際の製作で使われた例#
AWCIの専門誌 Horological Times に、Kaj Korpelaが時計を製作する連載がある。2017年3月号のHenrik Korpelaによる記事は、本書付属CDの計算プログラムに歯車の歯数、カナの葉数、振動数などを入力し、輪列の設計に用いた過程を記す。カナは、歯車とかみ合う小径の歯車である。6
その製作では、図面と手持ちの切削工具の寸法のわずかな差が、かみ合いの問題として現れ、カナの作り直しを伴う調整が必要になった。計算結果をそのまま完成品の保証にせず、工具と加工後の状態に照らす実例である。これは専門誌における具体的な利用報告であり、すべての設計例を検証した書評ではない。6
研究での参照例もある。Pierre-Henri Morinの2014年のEPFL博士論文は、日差など、時計の歩度測定の定義を説明する箇所で、本書183頁を参照している。設計に加え、歩度測定の概念を整理するためにも使われている。7
参照するときの範囲#
出版社は技術者や設計部門を主な読者として位置付けている。目次と公開本文からも、フランス語の技術用語、力学、歯車の計算、図面の基礎に触れる本であることが分かる。修理時の分解手順だけを探す場合とは、参照する目的が異なる。2 3
初刊のCD-ROMにはMathcad・Excel・PDF形式の資料があるとBnFは記録している。出版社の現行ページも計算資料とLéopold Defossezの Théorie générale de l’horlogerie のPDFを案内するが、古い計算ファイルの現在の環境での動作や、初刊CDと配布資料の同一性はここでは検証していない。3 5
本記事では出版社の公開本文・目次、公的書誌、専門誌の製作記事、研究論文の該当箇所を確認した。書籍全体や付属計算プログラムを通読・実行した紹介ではなく、未公開の章の詳しい式や、二つの版の変更点は説明の対象としていない。
参考文献#
- スイス国立図書館、Das Schweizer Buch / Le Livre suisse, 2011年第14号、印刷頁37、項目565(BN 001645121)。初刊の刊年・頁数・CD-ROM・ISBN。全国書誌PDF(閲覧日:2026年11月7日)。
2. EPFL Press、「Traité de construction horlogère」。本書の背景と「Etude de la construction」以下の公開本文、図10.3–10.6に対応する配置の説明。公開本文(閲覧日:2026年11月7日)。
3. EPFL Press、Traité de construction horlogère, 第2版、2021年。著者表示、目次、刊行情報。出版社書籍ページ(閲覧日:2026年11月7日)。
4. Bibliothèque nationale de France、Traité de construction horlogère, 2e éd., 2021, FRBNF46875505。第2版書誌(閲覧日:2026年11月7日)。
5. Bibliothèque nationale de France、Traité de construction horlogère, 2011, FRBNF42473870。編集調整者・電子資料の記録。現行配布資料の案内は文献3も参照。初刊書誌(閲覧日:2026年11月7日)。
6. Henrik Korpela, “Making a Watch from Conception to Finished Product with Kaj Korpela, Part Three”, Horological Times, March 2017, p.20。輪列の設計・加工例。AWCI掲載誌PDF(閲覧日:2026年11月7日)。
7. Pierre-Henri Morin, Analyse et classification pour le contrôle qualité par le traitement du signal : méthodologie et mise en œuvre, thèse EPFL no 6180, 2014, §5.8、印刷頁103、参考文献[27]。EPFL公開論文(閲覧日:2026年11月7日)。