Watch and Clock Making and Repairing:部品と工具を作る時計修理の技術書

Watch and Clock Making and Repairing:部品と工具を作る時計修理の技術書#

Watch and Clock Making and Repairing は、W. J. Gazeley(William John Gazeley)が、機械式の携帯時計・置時計・航海用精密時計の構造と修理をまとめた英語の技術書である。機構の説明に、やすり掛け、旋盤加工、修理用工具の自作をつなげ、工房で何を作り、どう直すかを扱う。1953年に初刊され、その後も再刊された。1 2

工具の使い方を、仕上がりにつなげる#

本書の特徴を示すのが、冒頭の作業台の説明である。1975年刷の第1章では、台や万力の高さが変わると、やすりで削る面の前後に偏りが出ると説明する。作業環境を整える理由を、平らな面を作るという具体的な加工結果に結び付けている。1

ここから読み取れるのは、時計の構造を知ることと、それを狙った形に加工することを一続きに扱う姿勢である。故障部品を交換するだけでなく、必要な工具や部品を工房で製作する仕事が本書の射程に入る。序文も、特定の作業を容易にするため著者が使ってきた工具と、その作り方を説明すると述べている。1

著者は同じ序文で、雑誌 Watchmaker, Jeweller and Silversmith の連載に寄せられた関心を刊行の背景に挙げる。想定するのは学生、時計の仕事を職業にしようとする人、すでに修理に従事する人である。原理・構造と清掃・修理を一冊にまとめる意図が明確に示されている。1

加工、機構、故障の診断#

1993年Robert Hale版の紹介文は、工具と材料から始め、機械の構造、歯車列、脱進機、ぜんまい、報時機構へ進む構成を示す。脱進機は、歯車の進みを区切りながら振動する部品へ力を補う装置である。針を回すための歯車と、一定の周期を作る部分を区別しつつ、修理の対象として結び付ける内容になっている。2

紹介文では、やすり加工と旋盤加工に重点を置き、故障と歩度不良の原因を挙げた付録も備えると説明される。歩度とは時計の進み遅れの割合であり、止まらずに動くことと、正しい速さで動くことは同じではない。工具・機構の説明に加え、症状から原因を探す参照先を持つことが、本書の構成上の特徴である。2

Henry B. Friedによる1982年の書評は、穴あけ、ねじ切り、研磨、歯切り、脱進機部品の製作まで扱う点を具体的に挙げる。巻上げや時刻合わせ、時計の打鐘と携帯時計のリピーター、振り子やテンプなども対象に含まれるという。リピーターは操作に応じて時刻を音で知らせる機構であり、通常の運針だけでは説明できない別の機械系を必要とする。3

これらは本書の全工程をここで再現する説明ではなく、出版社の紹介と専門家の書評から確認できる範囲である。特定の部品寸法、加工条件、精度値を、未読の章から補ってはいない。

刊行時の評価と、図面を読む際の注意#

1953年6月の Practical Mechanics に掲載されたF. J. C.署名の書評は、著者をNorthampton Polytechnicの時計学講師と紹介する。書評は豊富な図、工具自作の説明、項目を行き来するための索引に注目し、学生と実務家の双方に向く構成と評価した。これは刊行時に本書がどう受け止められたかを示す資料であり、評価の言葉をそのまま本書の客観的な性能とするものではない。4

1982年のFriedの書評も、部品製作に踏み込む情報を評価する一方、一部の図面に誤りがあると注意を添える。この短い書評では該当する図番号や訂正内容は示されていないため、特定の図を誤りと断定することはできない。古い技術書の図を実際の作業へ移す際には、対象の機構や寸法との照合が必要になる。3

後年の参照例として、Archie B. Perkinsの2003年のミニッツリピーター組立解説は、本書1959年刊行本のpp.282–300を参考文献に挙げている。これは複雑な機械式時計の実務解説で参照された具体例である。ただし、Perkinsの記事全体の手順を、そのままGazeleyの本文と見なすことはできない。5

版と刷を区別する#

同じ書名でも、初刊、改訂版、後年の刷を区別する必要がある。確認できた記録は次のとおりである。

刊行・記録確認できた事項参照時の注意
1953年初刊Heywood & Co.。刊行時書評は440頁・314図と記載する。後年の425頁という書誌を初版へ移さない。
1975年第5刷Newnes-Butterworths。奥付は1953年初刊、©1958、1971年第3刷、1973年第4刷、1975年第5刷と記す。ISBN 0-592-00062-1。“Impression”は刷の表示であり、第5改訂版という意味ではない。
1982年再刊Friedの書評はVan Nostrand Reinholdによる1958年版の復刻として紹介し、427頁・314図とする。書評に記された造本情報として扱う。
1993年Robert Hale版London、Rev. ed.、425頁。ISBN 0-7090-4995-1。CiNii BooksのNCIDはBA86653759。Google Booksは版欄に3・再版・改訂等を併記するが、本文の改訂箇所は未比較。

初刊・1975年刷は原奥付と刊行時書評、1982年再刊は同時代書評、1993年版はCiNii BooksとGoogle Booksを照合した。頁数440・427・425の差を、一つの正しい値へ機械的に統一していない。前付を含めた数え方や版ごとの造本の違いについて、現物全体による確定はしていない。1 2 3 4 6

所蔵と確認範囲#

日本国内の所蔵は、1993年版のCiNii Books書誌から大学図書館の目録へ進める。Internet Archiveにも別の刊行本の記録があるが、所蔵記録があることと、全文を自由に閲覧できることは区別する必要がある。6 7

今回直接確認した原書の範囲は、公開スキャンの扉・奥付・目次・序文と冒頭の工具説明である。全章の通読、1993年版本文との逐語比較、日本語訳の有無の確定は行っていない。機構の広い範囲は出版社紹介と書評を使い、原書を直接読んだ具体例とは分けた。

購入先#

英語ハードカバーのRobert Hale版(ISBN 9780709049951)です。Amazonの商品情報は1997年刊と表示しており、上記の1993年の書誌記録とは区別してください。版・言語・出品条件はリンク先でご確認ください。

AmazonでWatch and Clock Making and Repairingを見る(広告)

Amazonのアソシエイトとして、私の時計学は適格販売により収入を得ています。価格・在庫・配送条件はリンク先でご確認ください。

参考文献#

  1. W. J. Gazeley, Watch and Clock Making and Repairing, Newnes-Butterworths, Fifth Impression, 1975。扉・奥付、序文vi、第1章冒頭pp.1–6。公開スキャンの閲覧ページ。投稿資料のため配布許諾は未確認、画像は転載しない。閲覧日:2026年11月7日。

2. Google Books, Watch and Clock Making and Repairing, Robert Hale, 1993。書誌と同版紹介文、本文プレビューとは区別。閲覧日:2026年11月7日。

3. Henry B. Fried, “Book Review”, Horological Times, October 1982, p.45(PDF第47頁)、AWCI公開PDF。閲覧日:2026年11月7日。

4. F. J. C., “Watch and Clock Making and Repairing”, Practical Mechanics, June 1953, p.389(PDF第30頁)、公開誌面PDF。閲覧日:2026年11月7日。

5. Archie B. Perkins, “Technically Watches”, Horological Times, September 2003, p.24、AWCI公開PDF。ミニッツリピーター組立連載末尾の参考文献。閲覧日:2026年11月7日。

6. 国立情報学研究所、CiNii Books:Watch and clock making and repairing, Rev. ed., 1993。閲覧日:2026年11月7日。

7. Internet Archive, Watch and Clock Making and Repairing, Van Nostrand Reinhold, 1986。所蔵・書誌の参照先。閲覧日:2026年11月7日。