National Association of Watch and Clock Collectors, Inc.(NAWCC)は、時計と時間計測に関心を持つ人々のための米国の非営利団体です。1943年に収集家の交流から始まり、現在は博物館、図書館・研究センター、会誌、教育講座、支部活動を通じて、時計そのものと、それを理解するための知識を保存・共有しています。2026年11月7日確認の公式紹介では、会員は世界で約1万人です。1
どのような組織か#
本拠はペンシルベニア州コロンビアの514 Poplar Streetにあります。2021年版の法人定款は、正式名称を National Association of Watch and Clock Collectors, Inc. と記し、株式を持たないペンシルベニア州の非営利法人と定めています。時計学の教育、研究資料の収集と後世への提供、時計資料の公開展示、図書館、各地の支部の支援が目的に含まれます。時計を製造する企業やブランドではなく、収集品を文化・技術の資料として役立てる組織です。2
運営では理事会と執行部の役割が分かれます。公式サイトが公開する2022年6月7日版の細則では、議決権を持つ理事は会員選出7人と理事会任命5人で、Executive DirectorとLegal Counselは議決権のない職務上の構成員です。Executive Directorは理事会が任命します。会員資格は時計学への関心、申込み、会費、規則・倫理規範の遵守を条件とし、職業時計師に限定していません。細則は、入会自体が協会による表明・保証を意味するものではないとも明記しています。3
収集家の通信から全国団体へ#
公式の歴史記述は、L. D. Stallcup、Robert Franks、L. E. Colemanによる交流を創設の核に挙げています。テネシー州のStallcupは変わったムーブメントを集め、仲間と知識や重複品を交換する場を求めていました。フィラデルフィアのFranksは文化史・古時計への関心を持ち、ニューヨークの時計関係者の会合にも通っていました。4
1943年、彼らはWatch Collectors’ Clubの趣意書を配布しました。この5頁のタイプ原稿は、後に会報第1号とみなされました。置時計・掛時計の収集家も対象に含めたいという要望から名称が変わり、1943年11月8日付の第2号にはNational Association of Watch and Clock Collectorsの名が用いられています。先行して存在したPhiladelphia Watchmakers’ Guildは第1支部となり、1944年10月28日にフィラデルフィアで最初の年次集会が開かれました。時計の話を交換する通信の仕組みが、刊行物、支部、集会へ発展したのです。4
コロンビアとの結び付きは、1952年にEarl T. Stricklerが事務を担うSecretaryに選ばれたことから始まります。翌年には会報編集者も務め、自宅を事務と資料の拠点にしました。1971年には現在の住所に本部用の建物を購入しています。1943年の団体発足、1971年の本部取得、1977年の博物館一般公開は、それぞれ異なる出来事です。4 5
博物館:個人の収集を公共の資料へ#
National Watch & Clock Museumの前史には、Stricklerの自宅にあった会員向けの展示があります。1971年に博物館取得委員会が設けられ、1976年の建物拡張を経て、1977年11月6日に一般公開が始まりました。初期の展示は1,000点未満でしたが、会員の寄贈が収蔵を支え、1985年には展示・図書館部分が拡張されました。さらに大規模な工事を経て、1999年10月23日に再開館しています。5

図1:コロンビアのNational Watch & Clock Museumの時計塔。2018年10月21日撮影。作者:Smallbones。出典:Clock Tower Columbia PA LanCo.jpg(Wikimedia Commons)。ライセンス:CC0 1.0。変更:縦横比を保って縮小、JPEG再圧縮。
博物館の意義は収蔵数だけではありません。2009年承認のCollection Planは、時計に加え、製作工具・設備などを収集対象とし、当時の強みを1800〜1950年の米国製資料に見いだす一方、年代・地域に偏りがあることも認めています。取得は不足する分野を補い、資料を保存・記録・研究・展示できる条件を考えて行う方針です。これは2007年時点の収蔵記録を用いた歴史的計画であり、その比率を現在の構成として読むべきではありません。6
同計画では、新規取得や収蔵からの除外を一人の判断に委ねず、職員、博物館収蔵委員会、理事会の役割を定めています。個人の所有品を集める段階から、将来の研究者や一般来館者に対して説明責任を持つコレクションへ移す仕組みといえます。6
図書館とアーカイブ:物の背景を調べる#
Fortunat Mueller-Maerki Library & Research Centerは、本、映像、カタログ、逐次刊行物、アーカイブ資料を扱います。公開された図書館案内では一般の調査利用と会員の貸出制度が区別され、貸出可能な複本を目録で確かめる仕組みです。特別コレクションは貸出対象外であり、図書館にある資料がすべて郵送貸出できるわけではありません。7
アーカイブの公開目録には、時計会社の記録、販売・修理店の資料、個人文書、写真などが記載されています。2026年11月7日確認の入口案内は、140以上の資料群、棚延長1,200フィート以上としています。ここでの目録は資料の所在と構成を示す検索手段であって、収蔵資料の全頁がオンライン公開されているという意味ではありません。8
例えば協会自身の資料群MG-334は、1942〜2015年の文書を対象とし、組織運営、広報、行事、会員・支部、写真などの系列に分かれます。所蔵年代の始まりが団体発足より前でも、発足年を1942年と読み替えることはできません。また、研究のための閲覧・複写と、資料を公表するための著作権許諾は別の手続きとして案内されています。9
近年の具体例はHamilton Watch Company資料のデジタル化です。米国のInstitute of Museum and Library Services(IMLS)は、2025年度のMuseums for America助成として39,177ドルを記録しています。対象はマイクロフィルム344巻と紙資料約15,000頁で、技術・管理・販売に関する記録を調査し、デジタル化とオンライン利用へつなぐ計画です。この記録は採択された事業の内容を示しており、すべての公開が完了したことを示すものではありません。10
刊行物:経験を検索できる知識にする#
『Watch & Clock Bulletin』は年6号の会誌です。時計史・研究・技術の記事に加え、人々の活動や支部のニュースを扱います。現行の出版案内は査読誌と位置付け、会員以外からの投稿も受け付けています。紙とオンラインの会誌、月刊ニュースレター、過去の売買・交換用別冊『Mart & Highlights』は、それぞれ役割の異なる媒体です。1 11
会誌の索引案内は、1943年の創刊号からの検索手段を提供しています。特に1940年代の第1〜30号は復刻版から索引化されており、索引頁と原本頁が異なるため換算表を使うよう注意しています。古い記事を引用する際は、同じ題名に到達するだけでなく、どの版の頁を示しているかまで確認する必要があります。12
収集家が持つ一つの時計の観察、修理時の発見、文書の読解を文章にし、後から検索できる形で残すことが、この出版活動の役割です。会誌、現物、図書館資料が互いの手掛かりになり、個人の経験を次の調査に利用できるようにします。
教育と支部活動#
School of Horologyは、コロンビアで時計の技能と知識を伝えています。2026年11月7日確認の教育案内は、置時計・掛時計、携帯時計、時計のための機械加工、ステンシルや裏面ガラス絵などの装飾技法を基本領域に掲げています。修理だけでなく、ケースや文字盤まわりの歴史的な装飾も、時計を理解し維持する技能に含めている点が特徴です。講座と自宅学習用の映像教材が用意されています。13
支部には地域を基盤にするものと、特定の関心を共有するものがあります。2023年4月承認のChapter Handbookは、通常の会合に運営の議事、教育プログラム、時計関連品の売買・交換の場であるMartを組み合わせる例を示しています。さらに、公共の時計の修復、地元図書館での展示、他団体での講演を支部企画の例に挙げます。収集・交流を各地の教育と保存へ結び付ける活動です。14
同Handbookは、NAWCC本体の会員資格と支部会員資格を区別し、支部側の会費や規則も定める構成です。したがって、本部のサービス、各支部の企画、学校の受講を一つの資格制度としてまとめることはできません。14
主な年表#
| 年月日 | 出来事 |
|---|---|
| 1943年 | Watch Collectors’ Clubの趣意書を配布。後に会報第1号と位置付けられる。4 |
| 1943年11月8日 | 会報第2号でNational Association of Watch and Clock Collectorsの名称を使用。4 |
| 1944年10月28日 | フィラデルフィアで最初の年次集会。4 |
| 1952〜1953年 | StricklerがSecretary、続いて会報編集者となり、コロンビアの拠点形成を担う。4 |
| 1971年 | 514 Poplar Streetの本部用建物を購入。博物館取得委員会が発足。4 5 |
| 1977年11月6日 | 博物館を一般公開。5 |
| 1985年 | 博物館の展示・図書館部分を拡張。5 |
| 1999年10月23日 | 大規模拡張後の博物館が再開館。5 |
| 2009年6月 | 理事会が博物館Collection Planを承認。6 |
| 2025年度 | IMLSがHamilton資料デジタル化事業への助成を記録。10 |
NAWCCの歩みは、時計を所有する楽しみが、資料の保存、技術の伝承、公開研究へ広がった過程でもあります。時計そのものを残す博物館、背景を調べる図書館、発見を記録する会誌、手を動かして学ぶ学校と支部が、異なる入口から時計文化を支えています。
参考文献#
以下のウェブ資料の閲覧日は2026年11月7日です。
- NAWCC, About the NAWCC。団体紹介・活動・現行会員数の概数。
2. NAWCC, Articles of Incorporation, Version 1.0, 2021年12月3日、pp.3–4、7。
3. NAWCC, Bylaws, Version 3.0, 2022年6月7日、pp.6、9、17。
4. NAWCC, About Our Association — Our History。1993年大会プログラムからの一部再録を含む公式沿革。
5. Lindsey Campbell, National Watch & Clock Museum: From the Basement to the Top, 『Watch & Clock Bulletin』第434号、2018年7–8月、pp.314–318。
6. National Watch & Clock Museum, Collection Plan, 2009年6月理事会承認、pp.2–6、9–10。
7. NAWCC, Library & Research Center, Using the Library / Lending Guidelines。
8. NAWCC LARC, Archives Public Interface。資料群と目録の案内。
9. NAWCC LARC, National Association of Watch and Clock Archives Collection, MG-334。資料群概要・構成・利用条件。
10. Institute of Museum and Library Services, MA-258006-OMS-25, Museums for America, FY2025。
11. NAWCC, Publications。会誌・投稿・ニュースレター・過去の別冊。
12. NAWCC, Bulletin Index。索引と初期号の頁換算案内。
13. NAWCC, Education。学校の基本領域・映像教材。
14. NAWCC, Chapter Handbook, 2023年4月承認、§§2、7–10。