牧原大造(まきはら・だいぞう、Daizoh Makihara、1979年生まれ)は、日本の独立時計師である。埼玉県を拠点に、時計の設計・部品製作・組立と手彫り装飾を手掛ける。江戸切子の文字盤を用いた「菊繋ぎ紋 桜」と、花弁のオートマタと高精度月齢表示を組み合わせた「花鳥風月」を代表作とし、2022年からAHCI(独立時計師アカデミー)の正会員となっている。1 2
生涯と時計製作への転身#
料理人から時計学校へ#
本人の公式プロフィールは1979年8月8日生まれとし、AHCIは出身地を愛知県と記す。高校卒業後は料理の道に進み、イタリア料理の料理人としてホテルや調理の専門学校で働いた。時計への関心は転職以前からあり、MUUSEOのインタビューでは、貯金して購入したロレックス「デイトナ」の構造を知り、分解したいと思ったことを回想している。ナカニシの2023年の取材では、初任給で購入したオメガ「スピードマスター」の裏から見えるムーブメントについて語っている。別々の時計との経験を、一つの購入の逸話としてまとめることはできない。1 2 3 4
27歳で時計の道へ転じ、2007年にヒコ・みづのジュエリーカレッジへ入学した。ナカニシの取材では、同校のジュエリー課程に通う友人から時計のコースがあると聞いたことが契機とされる。AHCIの経歴によれば、2010年に卒業し、さらに1年間、研究生として時計製作に取り組んだ。2026年の本人インタビューでも、修理技術を重視する3年間の教育に続いて製作を学ぶ4年目へ進み、その期間にトゥールビヨンを作ったと説明している。本人公式略歴の「2011年から研究生として時計製作を開始」という表記とは細かな時期に差があるが、3年課程に追加して製作の研究生課程へ進んだ経歴は一致する。1 2 4 5
トゥールビヨンは、テンプや脱進機を載せたキャリッジを回転させる複雑機構であり、ここでは研究生時代の製作経験として重要である。MUUSEOは写真で「クラシックレギュレーター」「トゥールビヨン」「doppl03」を紹介している。ただし各作品の完成年、寸法、輪列の設計図や販売本数は示しておらず、後年のブランド第1作と、学校・協業時代の作品群は区別する必要がある。3 5
デュフォー、彫金、修理と教育#
学生時代、テレビ取材で会いたい人物としてフィリップ・デュフォーの名を挙げ、スイスで彼の仕事を学ぶ機会を得た。MUUSEOの本人談では、数日間、朝から晩まで磨きの技術と心構えに接したという。ナカニシの取材でも、金属から部品を作る方法、装飾、時計作りへの姿勢が転機になったと述べている。これは短期間の交流・学習であり、長期の徒弟修業を意味するものではない。3 4
彫金への関心は、外装の授業で見た金川恵治の映像から生まれた。MUUSEOによれば、金川が独学で学んだと知り、牧原も工具店で教えを受けながら練習を重ね、細かな菊文様をフリーハンドで彫るようになった。本人の工程解説も彫金を独学とする。金川との関係は映像による影響として確認でき、直接師事したとはされていない。3 6
研究生課程の後には、時計修理会社で約3年間働き、母校で教員を務めたとAHCIは記す。修理会社への就職・退職や教員就任の年は、その経歴だけから確定できない。2017年に「DAIZOH MAKIHARA WATCH CRAFT JAPAN」を設立した。2023年のナカニシ取材時にも、製作と母校での教育を並行し、次世代の時計製作者を育てたいという姿勢が紹介されている。2 4
doppeLとの協業と最初の顧客#
MUUSEOの取材は、茨城県の時計店doppeL(ドッペル)との出会いを2009年までさかのぼる。店の15周年記念時計を学校の講師が見に来たことから交流が始まり、牧原のトゥールビヨンや装飾を見た店主が次のオリジナル時計製作を依頼したという。工具・設備の調達では、つくば地域の工作機械関係者との人脈が助けになった。3
同取材は、この協業のクラウドファンディングについて、目標50万円に対して202%を達成したと報じる。時計を受け取りに熊本から上京した購入者や、完成品を手渡す経験が製作への自信につながったという本人の回想も、このdoppeLの文脈に属する。後の「菊繋ぎ紋 桜」の顧客や、2022年のKnotプロジェクトの実績に移して扱うことはできない。写真で確認できるdoppl03以外のシリーズ名や、資金募集・納品の正確な年月については、同記事だけでは確定できない。3
代表作品と技術#
菊繋ぎ紋 桜#
本人の発表通知は「菊繋ぎ紋 桜」の発表を2018年4月16日とする。AHCIも2018年を挙げる一方、本人の現在の略歴と2021年の『クロノス日本版』は2019年を挙げる。少なくとも2018年の発表記録が存在し、2019年にはバーゼルワールドで紹介されたことが報道されている。ブランド第1作という呼称は、学校やdoppeL時代の製作経験を否定するものではない。1 2 7 8 9
最大の特色は、ミツワ硝子工芸に別注した江戸切子文字盤と、牧原自身によるムーブメントの桜の彫金を組み合わせた点にある。2019年の『MEN’S Precious』は江戸切子の厚さを0.5mmと報じる。本人とAHCIは江戸切子文字盤を世界初の試みと位置付けているが、この優先権については当事者の説明として扱う。2 8 9
公式製品仕様によれば、18Kピンクゴールド製ケース、手巻きCal. DM 01、17石、18,000振動/時、手作業で青焼きしたブルースチール針を備える。2026年の本人インタビューはシンプルな3針時計と説明している。複雑機構の数よりも、文字盤の光学的な表情と、裏側の手彫り・仕上げを一つの作品にまとめることに重点がある。5 10
受注生産の作品で、公式製品ページは完売と表示する。掲載価格は税込590万3,700円からで、仕様により変動する。これは閲覧時の掲載情報であり、発表時の全販売価格や実際の総製作本数を意味しない。2019年の報道は海外コレクターからの人気を伝えるが、購入者名や所有の来歴を公表していない。9 10
花鳥風月#
「花鳥風月」(英語名Beauties of Nature)は、自然の移ろいを機械的な動きで表す第2作である。本人サイトには2020年12月10日付の発表通知があり、同月15日にWatchMediaOnlineが新作として紹介した。2021年の『クロノス日本版』は2020年完成の試作品を扱い、本人の現在の略歴は2021年完成とする。したがって発表・試作の公開と、その後の完成・改良を区別して理解する必要がある。1 8 11 12
文字盤には江戸切子によるメジロと桜の意匠を置き、2時位置と10時位置の花弁が時間に従って開閉する。10時側は24時間、2時側は12時間の周期で、ゆっくり開き、周期の終わりに瞬間的に閉じる。6時位置には月齢表示を備え、ムーブメントの表裏には麻の葉文様の手彫り装飾がある。時計の時・分表示に加え、花の開き具合で半日・一日の進行を視覚化する構成である。8 12 13
2020年の発表資料と2021年の取材写真はステンレススティール製の試作ケースを示す。現在の公式製品仕様は18Kホワイトゴールド製ケースとWG尾錠、クロコダイルベルト、手巻きCal. DM 02、25石、18,000振動/時、直径42mm、日常生活防水を掲げる。『クロノス日本版』の約38時間というパワーリザーブは、同誌が扱った試作品の値である。8 12 13
2021年の本人談では、注文は入っているがまだ納品しておらず、開く動作や誤作動を考慮して花弁の大きさをコンマ数ミリ変えたいと説明している。これは機能する試作品の公開から、納品に向けた調整までを示す証言であり、後の納品数を表すものではない。2026年10月の日本語公式ページは注文受付の一時停止を表示し、価格欄に税込3,234万6,600円からと2,874万6,000円からの二つの表記が残る。価格を一つに決めて示すことは難しく、現行条件は本人への確認が必要である。8 13
製作工程と工学的背景#
江戸切子と金属の組み合わせ#
江戸切子文字盤を担当するのはミツワ硝子工芸である。本人の公開工程は、菊繋ぎ文様の位置をマーカーで割り出し、基準となる十字の切り込みを作り、等間隔の直線を深く切り、さらに斜線を交差させて文様を形成する過程を説明する。中央の基準線が傾いたり曲がったりすると、その後の文様にも歪みが及ぶため、原点と直線の精度が重要になる。14
難しいのは、円板の端部まで深く切り込む工程である。中央部と違って端には支えが少なく、指を添えて支持しながら削る必要があると公式工程は説明する。0.5mmという報道上の薄さをもつガラスを装飾する仕事は、単に模様を縮小する作業ではなく、支持の仕方と切削の順序を含む工芸技術に依存する。9 14
「花鳥風月」では、地板と切子文字盤の間に外周リングを置く。公式工程は両面を平らにした後、穴と座ぐりを加工し、切子の寸法に合わせた段を削り、地板に合わせて外周を仕上げると説明する。ガラスと金属を接続する具体的な受け部品の存在は確認できるが、接着剤の種類、保持力、耐衝撃試験や熱膨張に対する許容値までは公表されていない。15
花弁の開閉を実現する部品#
公式製作資料は「花鳥風月」の花弁を板厚0.1mmの銅板から作ると明記する。原盤に沿ってパンタグラフ式の彫刻機で輪郭を切削し、バリを取り、表面を仕上げる。その後、タガネでハンマリングして5枚の花弁を均等に曲げ、花弁同士をつなぐ部品をシェラックで取り付けて動きを確認する。花を動かす薄板の形状、曲がり方、連結の調整が、見た目と作動を同時に決める工程である。16
雌蕊の支柱は炭素鋼の丸棒から削り、ねじ加工後にボールエンドミルで凹みを作る。そこには直径0.6mmの鉄球を入れ、回転を滑らかにするという。先端のボールねじについては、切削・穴あけ・ねじ加工と熱処理の後、ボールを収める溝とテーパーを加工し、先端をバーニッシャで曲げ込む。球を抜けないよう保持しつつ、溝の中で自由に回転させる構造として説明されている。この「ボールねじ」は本人の部品名であり、工作機械に用いる一般的な循環式ボールねじと同じ構造だと解釈すべきではない。17 18
閉じた花を収めるカップは真鍮の丸棒から作る。片側の切削、ねじ加工、穴あけ、溝加工を終えてから切り離し、反対側を再び中心出しして花弁を収めるカップ状に加工する。薄い花弁だけでなく、それを支える鋼製支柱、回転を助ける球、収納する真鍮カップが組み合わされていることが、一次資料から分かる。19
腕時計は姿勢が変わるため、花弁の開閉を重力だけに頼ることはできない。本人の工程資料は、花弁を開かせるバネと瞬間的に閉じさせるバネをそれぞれ製作すると説明する。直径0.07mmのバネ線を旋盤に付けた治具へ手で巻き、余分な線を切ってから低温での焼きなましを行う。花を動かすためのバネが独立して作られている点は確認できるが、時刻輪列からの駆動経路、カムの輪郭、バネ定数、消費エネルギーの数値は公開本文では説明されていない。20
装飾用の梅の花弁にもパンタグラフを用いる。こちらは6枚の花弁を120度ずらして2枚一組にし、面を整えた後、ハンマリングによって立体形状を作る。叩く強さを変えて、蕾から満開までの形を表現するという。装飾用の梅の形と、動作する5枚の花弁の工程を混同すると、枚数や機構の説明を誤ることになる。21
月齢表示の歯数と公称精度#
メーカーは「花鳥風月」の月齢表示を、122年で1日の表示誤差とするパーペチュアルムーンフェイズと呼ぶ。ここでの「パーペチュアル」は月齢表示の呼称であり、日付・曜日・閏年を扱う永久カレンダーの搭載を意味しない。また122年は歯車比による公称値であり、時計全体が122年間無調整で動き続けることや、長期実測の記録を意味しない。13 22
本人の製作解説は、通常の59歯月車と対称位置の二つの月を説明した後、高精度型では月車を135歯とし、7歯と16歯の日星車を追加すると明記する。135歯の月車は、専用治具でブランクを保持し、旋盤で寸法を整え、カッターを中心出しして歯を切る。したがって歯数を推測する必要はない。一方、歯車の接続図や送り動作の全条件は本文だけでは分からないため、歯数の記載と、比率から導く理論的説明は区別する。22
比率の意味を説明する簡単なモデルとして、月車に二つの月面があり、1日当たりの送り量が16/7歯に相当すると仮定すれば、表示上の一月の周期は次のようになる。
ここで135は月車の歯数、2は一回転で表示する月の周期数、7/16は送り量の逆数である。この計算は公表歯数を解釈するモデルであり、実機の接続を測定した結果ではない。NASAが2000年について示す平均朔望月は約29.530588日で、月ごとの実際の長さには変動がある。22 23
平均朔望月を \( P_{\mathrm{moon}} \)、時計のモデル周期を \( P \)、経過日数を \( t \) とすると、表示のずれを日単位で近似した大きさは、一定周期モデルで
となる。時計が正しい時刻で連続作動し、平均月を一定とし、送りの取り落としがないという仮定の下では、上の高精度型は約122年で1日の差となる。同じ仮定で59歯・二月面・1日1歯送りの標準型は \( P=29.5 \) 日となり、約2.6年で1日の差を生じる。この比較は月齢表示の比率の違いを説明するもので、歩度や潤滑・摩耗などの実機性能を評価する式ではない。22 23
なお本人の工程ページは朔望月を29日12時間44分28秒と記すが、NASAの平均値は約29日12時間44分03秒である。前者を上のモデルへ入れると約218年となり、122年の公称値とは整合しない。公称精度を理解するには、平均朔望月、個々の月の変動、時計の歯車比を分けて扱う必要がある。22 23
地板、歯車、ねじと治具#
「花鳥風月」の地板について、公式工程は洋白材の両面を平らにし、設計図に従って穴を開け、歯車の回転空間になる座ぐりをエンドミルで切削すると説明する。片面の加工後には文字盤側を加工し、座ぐりを終えて外周を仕上げる。洋白は銅・ニッケル・亜鉛系の合金で、名称に反して銀そのものではない。ここでは本人が材料を明示した部品と、別工程で使う真鍮や炭素鋼を区別できる。24
巻芯の穴を開ける際にも専用治具を作る。地板の穴位置に合わせてピンとねじを設けて固定し、罫書き線を中心出しして穴を開ける。受けのねじ頭を収める部分は、足を取り付けて組み合わせを確認してから、あらかじめ穴を開けた板へ保持し、設計の深さに加工する。工具そのものだけでなく、部品を正しい位置・向きに保持する治具が、個別製作の工程を支えている。25 26
小歯車であるカナの製作について、本人は炭素鋼を切削し、焼き入れ・焼き戻しの後、歯溝と表面を鏡面に仕上げると説明する。ねじは必要な径・長さ・頭の大きさごとに作り、ローリングダイスによる転造を用いる。ねじ頭の平面とドライバー溝を加工し、熱処理と磨きを行う。これらは鋼の部品に対する公表工程であり、全ての部品が同じ材料・熱処理を受けるわけではない。27 28
2023年のナカニシ取材では、「花鳥風月」の約300箇所の穴あけに同社のモータスピンドルを使うと紹介される。これは工具メーカーによる使用事例の報告で、精度の公的試験証明ではないが、牧原の製作設備を具体的に示す。2026年の本人談でも古い機械を使い、穴あけ・座ぐり・歯車製作を行うとする。旋盤、フライス、パンタグラフ、治具、スピンドルという確認できる道具の組み合わせが、その製作環境を説明する。4 5
青焼き針、磨き、彫金#
青焼き針の工程は、機械加工と手仕上げを往復する。本人の解説では、フライスで大まかな形を削り、糸鋸とヤスリで整形し、厚みと中央の取り付け部分を加工する。治具に取り付けて面取りを行い、焼き入れ後に表面の被膜を除き、焼き戻しで青色にする。さらに面取り部分を鏡面に磨き、別に旋盤で作った洋白の分針用ハカマを針にかしめる。青色だけでなく、外形、縁の反射、取り付け部を作り分ける仕事である。29
アンクル受けの仕上げでは、ねじ留めと穴石の周りを掘り下げ、側面をヘアラインにしてから面取りを行う。本人の工程はエメリースティックを粗い番手から細かい番手へ進め、超硬の磨き棒やペースト状の研磨剤で艶を出し、最後に表面の放射目とめっきを施すと説明する。対となる穴の大きさをそろえ、面取りに必要な寸法を残すことも重視する。ここで磨くのは受けの装飾面であり、その説明を脱進機の接触面の摩擦低減へそのまま当てはめることはできない。30
彫金では超硬材からビュランを作り、工具を鏡面に仕上げてから彫り進める。本人はムーブメントがほぼ完成した後の作業と説明する。「花鳥風月」の金属文字盤では、真鍮板を切削し、ガーネット粒を落として梨地を作り、麻の葉文様の目印を付け、面取り・磨きの後に彫金する。機構の製作を終えた部品へ装飾を加えるため、彫り過ぎや傷が、それまでの仕事に影響する点も、この工程の難しさである。6 31
両代表作の18,000振動/時は、時計でいう半振動を数えれば毎秒5半振動、往復運動の周波数として2.5Hzに相当する。換算は \( f=18{,}000/(2\times3{,}600)=2.5 \) Hzである。これだけからパワーリザーブ、トルクの余裕、耐衝撃性、テンプの大きさを決めることはできない。代表作の公表仕様は花の動きと月齢表示を扱い、報時機構の仕様や音響測定を示していないため、音の心理効果や静粛性を製品性能として評価する資料はない。10 13
協業、教育、評価と現在の活動#
2022年3月4日、Knotは牧原と共同で企画した時計をMakuakeで発表した。後の公式プロジェクトページは目標金額の1293%を達成したと報告する。デザイン名は「浮桜(ふおう)」と「輪桜(りんおう)」で、桜形の開口部と彫金を組み合わせるか、円形の窓の周囲に桜を彫る構成となる。牧原は文字盤の桜だけでなく、ロゴやインデックスも手彫りする。32 33
KnotモデルはMIYOTA 90S5を用いる自動巻き3針時計で、38mm径、316Lステンレス製ケース、24石、28,800振動/時、最大巻上時42時間の駆動を公式仕様に掲げる。牧原のDM01・DM02とは別のムーブメントであり、工房の代表作を同一仕様のまま量産したものではない。Knotの製造・流通網と、個別の手彫り文字盤を組み合わせた協業として理解できる。33
牧原の作品は、本人が全ての素材加工を単独で行うという意味での完全自給ではなく、機構・彫金を中心に自身で製作し、江戸切子は専門の工房と協力する仕事である。2021年の取材では、自製部品を増やしつつ外部の助けも使い、より安定してシンプルな時計を作りたいという考えを示した。日本の工芸と時計製作を結び付ける特色は、この役割分担から具体的に説明できる。5 8 14
2022年4月2日のAHCI正会員昇格は、本人の通知とAHCIの会員年で確認できる。2025–2026年版Louis Vuitton Watch Prize for Independent Creativesでは「花鳥風月」が5組のファイナリストの一つに選ばれた。2026年3月24日の最優秀賞はハゼマン&モナンであり、牧原の選出はファイナリストとしての評価である。2 34 35
2026年3月の本人インタビューでは、第3作として36–38mm程度のシンプルな3針時計を開発中と述べ、江戸切子文字盤の改善と、より小さな部品の自製を目標とする。これは開発計画の証言であり、完成・発売の確認とは異なる。教育活動と国際的な発表の継続は確認できる一方、他社の花オートマタに直接影響を与えたことや、機構が他社へ移転されたことを示す資料は確認できない。4 5
年表#
| 年月 | 確認できる活動 |
|---|---|
| 1979年8月8日 | 誕生。AHCIは愛知県出身と記載。1 2 |
| 高校卒業後〜2000年代 | イタリア料理の料理人として働く。本人談では約8年間。4 5 |
| 2007年 | 27歳でヒコ・みづのジュエリーカレッジ入学。2 |
| 学生時代 | 金川恵治の映像を契機に彫金を学び、テレビ企画でデュフォーを訪問。正確な年月は未確定。3 4 |
| 2009年 | MUUSEOがdoppeLとの出会いの年として記す。3 |
| 2010年 | 3年課程卒業。追加の研究生課程で時計製作を学ぶ。2 5 |
| 2011年 | 本人公式略歴が研究生としての製作開始年とする。1 |
| 研究生課程後 | 時計修理会社で約3年働いた後、母校で教員を務める。就任年は未確定。2 |
| 2017年 | 自身のブランドを設立。2 |
| 2018年4月16日 | 本人サイトに「菊繋ぎ紋 桜」の発表通知。7 |
| 2019年3月 | AHCI準会員となる。2020年の発表報道は前年3月24日の推挙と記す。1 12 |
| 2019年 | バーゼルワールドで「菊繋ぎ紋 桜」を紹介。4 9 |
| 2020年12月10日 | 本人サイトで「花鳥風月」発表。11 |
| 2021年9月 | 『クロノス日本版』記事のWeb公開。試作仕様と納品前の花弁調整を紹介。本人略歴は同年完成と記す。1 8 |
| 2022年3月4日 | Knotとの共同企画をMakuakeで発表。32 |
| 2022年4月2日 | AHCI正会員に昇格。34 |
| 2023年7月 | ナカニシの取材で工房の加工と母校での教育を紹介。4 |
| 2025–2026年 | 「花鳥風月」がLouis Vuitton Watch Prizeのファイナリストに選出。2026年3月24日に最終審査・授賞式。35 |
| 2026年3月 | 第3作の36–38mm程度の3針時計を開発中と本人が説明。5 |
| 2026年10月の確認時点 | 公式サイトに両代表作を掲載。「菊繋ぎ紋 桜」は完売、「花鳥風月」は注文受付を一時停止と表示。10 13 |
資料上の限界#
経歴や製作工程には本人の証言を多く用いている。AHCIの会員情報、当時の発表通知、メーカー仕様、取材者の観察を照合しても、発表・完成の年や研究生の開始時期には表記差が残る。初期作品の総製作数、個別の顧客名と所有履歴、詳細な花弁駆動図、長期の性能試験は公開資料から確定していない。
公表された製作説明と、特許で法的に主張される発明の範囲は区別される。本人・メーカーの「世界初」や公称精度は、その帰属を明らかにして読む必要がある。
参考文献#
以下はいずれも2026年10月9日閲覧。製品価格・受注状態は閲覧時の掲載情報。工程写真・動画は転載していない。
1. 牧原大造「独立時計師について」。本人略歴。
2. AHCI「Daizoh Makihara」。会員プロフィール。
3. コダマ タク「ファンの力を結集して作った時計が話題に。実直にモノ作りの道をゆく若き時計製作師。」MUUSEO SQUARE、更新2022年6月28日。初期経歴・doppeL・彫金に関する取材。
4. ナカニシ「愛しきものたち 第32回 牧原大造様」、2023年7月3日。経歴、デュフォーとの交流・教育、スピンドル使用事例。
5. Robin Nooy「Talking To Daizoh Makihara, AHCI Candidate And LV Watch Prize Finalist」MONOCHROME、2026年3月20日。本人インタビュー。表題はCandidateだが本文は正会員と記載。
6. 牧原大造「エングレービング」。工具と彫金の工程。
7. 牧原大造「DAIZOH MAKIHARA『菊繋ぎ紋 桜』を発表しました」、2018年4月16日。
8. 広田雅将「【インタビュー】独立時計師『牧原大造』」webChronos、2021年9月26日(『クロノス日本版』2021年9月号掲載)。
9. 松山 猛ほか「ディープな時計の世界へようこそ!『独立時計師』がつくる時計に注目を!」MEN’S Precious、2019年7月25日。
10. 牧原大造「菊繋ぎ紋 桜」。製品仕様・完売表示。
11. 牧原大造「新作『花鳥風月』を発表しました」、2020年12月10日。
12. KITAMURA(a-ls)「DAIZOH MAKIHARAが、新作『花鳥風月』を発表!」WatchMediaOnline、2020年12月15日。発表資料に基づく紹介。
13. 牧原大造「花鳥風月」。現行掲載仕様・価格・注文状態。
14. 牧原大造「時計製作 江戸切子」。ミツワ硝子工芸と菊繋ぎ文様の製作工程。
15. 牧原大造「文字盤(外周リング製作)」。
16. 牧原大造「フラワー開閉機構(花弁)」。
17. 牧原大造「フラワー開閉機構(雌蕊支柱)」。
18. 牧原大造「フラワー開閉機構(支柱ボールネジ)」。
19. 牧原大造「フラワー開閉機構(フラワーカップ)」。
20. 牧原大造「フラワー開閉機構(バネ製作)」。
21. 牧原大造「花弁(梅)彫金 製作」。
22. 牧原大造「高精度ムーンフェイズ製作」。月車・日星車の歯数と製作工程。
23. Fred Espenak / NASA GSFC「Phases of the Moon: 1 to 100」。冒頭の平均朔望月と月ごとの変動。
24. 牧原大造「地板製作」「地板製作(文字盤側)」。
25. 牧原大造「巻芯穴あけ用(治具〜穴あけ)」。
26. 牧原大造「各受け ねじ溝 切削」。
27. 牧原大造「歯車(カナ製作〜仕上げ)」。
28. 牧原大造「ネジ製作」。
29. 牧原大造「時計針 製作」。
30. 牧原大造「部品仕上げ(アンクル受け)」。
31. 牧原大造「文字盤(製作〜面取り〜彫金)」。
32. 株式会社Knot「Maker’s Watch Knotが独立時計師 牧原大造氏とコラボレーション!」、2022年3月4日。
33. Maker’s Watch Knot「牧原大造プロジェクト」。達成率・浮桜/輪桜・仕様。
34. 牧原大造「AHCI 正会員メンバーになりました」、2022年4月11日(昇格は4月2日)。
35. ルイ・ヴィトン「2025–2026年版ファイナリスト」、ルイ・ヴィトン ジャパン「第2回Louis Vuitton Watch Prize最優秀賞」、2026年3月30日。