シュランベルクの時計文化を訪ねる:段状工場と暮らしの時計を巡る一日

シュランベルクの時計文化を訪ねる:段状工場と暮らしの時計を巡る一日

黒い森で時計を見たいとき、鳩時計の店だけを探すと、この地域のもう一つの顔を見落とします。ドイツ南西部のシュランベルク(Schramberg)には、山腹に重なるユンハンスの旧工場、日常用の時計を展示する博物館、時計工場へ電力を供給した発電設備が残っています。製品の形だけでなく、「どこで、どのように大量につくり、人びとはどう使ったのか」を現地で考えられる町です。1 2 4

時計を中心に一日使うなら、午前にユンハンス・テラッセンバウ博物館、午後に旧H.A.U.工場地区のエアフィンダーツァイテン(ErfinderZeiten)を訪ねる構成が組みやすいでしょう。前者は16時閉館なので先に訪ね、後者では時計展示と生活風景を結び付けます。以下の開館・料金・交通情報の確認日は2026年10月23日です。1 3

二つの地区で三つの施設を見る#

場所時計を見る視点所在地
ユンハンス・テラッセンバウ博物館作業場の採光、黒い森の時計、部品づくりと製品の変化Lauterbacher Straße 68
エアフィンダーツァイテン黒い森の時計と、戦後の暮らし・移動手段Gewerbepark H.A.U. 3/5
ディーゼル博物館時計の大量生産を支えたエネルギー設備旧H.A.U.工場地区

ユンハンスの段状棟とH.A.U.地区は別の訪問先です。H.A.U.はハンブルク=アメリカ時計工場の略称で、現在の地区には博物館のほか事業所もあります。町の時計遺産をひとつのメーカーの展示としてまとめず、建物の住所を使い分けて移動すると迷いにくくなります。1 3 5

午前:テラッセンバウで工場の形を見る#

山腹に階段状に重なるユンハンスの旧工場と、各段の長い窓列

図1:ユンハンスのテラッセンバウ。山の斜面と作業場の配置を一緒に見ると、段状の形が分かる。写真:Martin Hahn。出典:Wikimedia Commons個別ファイル、原出典:Landauf, LandApp 投稿216871。利用条件:CC0 1.0 Universal。変更なし。

テラッセンバウとは段状の建物を意味します。1916〜1918年に建築家フィリップ・ヤーコプ・マンツが設計した工場では、急斜面に沿って九つの段を重ね、細長い作業室のほぼすべての仕事場を窓の近くに配置しました。まず窓列と山腹の関係に目を向けてください。時計の細かな作業に必要な自然光を、敷地の制約のなかで確保する建築です。1

展示は、木製時計から音楽や人形を動かす時計、ユンハンスの製品、部品を供給した産業へと視野を広げます。見どころを絞るなら、時計師の工房、音楽を自動演奏する装置、地元Pfaff & Schlauderのばね製造設備を比べると、完成品の裏側にある仕事が見えてきます。ばねは時計内部に力を蓄える部品でもあり、ケースや文字盤だけでは工場の技術を捉えきれません。1

段状棟の展示は、現在稼働する生産ラインの見学と同じものではありません。機械や工房の展示を見る行程として計画し、実演の実施時刻や特別な案内を希望する場合は館へ確認してください。

開館と案内の頼み方#

ドイツ語の公式案内では火〜日曜10〜16時、最終入館15時、月曜休館です。12月24〜26日・31日、1月1日・6日、ファスネットの日曜と火曜も休館とされています。通常料金は8ユーロ、割引4ユーロ。ガイドは事前問い合わせ制で、1組最大25人、50ユーロに入館料が加わります。窓口は anfragen@junghans-terrassenbau-museum.de です。英語案内と開館時刻が異なるため、遅い到着を予定する場合も16時閉館を前提に、訪問日を指定して確認するのが確実です。1

午後:エアフィンダーツァイテンで時計を暮らしへ戻す#

エアフィンダーツァイテンは自動車と時計の博物館です。時計だけの専門展示を建物全体に想像するより、戦後の暮らしと移動手段をたどりながら、その上階で黒い森の時計史を見る施設と考えると、時間を配分しやすくなります。公式の時計案内は4. OG、日本の数え方では5階に当たる階を示しています。2

時計展示では、鳩時計、マックス・ビルの台所時計、目覚まし時計、スポーツ計時が紹介されています。装飾だけを比べず、何を伝え、どこで使う時計なのかに注目すると、違いがはっきりします。鳩時計は時刻を音で知らせ、台所時計は日常の視認性、目覚まし時計は決まった時刻の合図、競技用の計時は短い時間の比較という別々の役割を担います。台所や商店などの生活展示と往復して見ることで、時計を単独の収集品から、生活の道具へ戻して考えられます。2

時計を最優先にするなら、受付で時計展示の場所を確かめ、そこで時間を確保してから自動車や生活風景へ広げる見方が向いています。同行者が車にも関心を持つ場合は、最初から館全体に2時間以上を配分するなど、興味の違いを行程へ反映させてください。これは本記事の時間配分の提案であり、全展示を見終える標準時間ではありません。

料金・冬休み・予約#

公式案内の通常開館は火〜日曜。3月15日〜10月31日は10〜18時、11月1日〜3月14日は10〜17時です。1月7〜31日は休館。復活祭の月曜、聖霊降臨祭の月曜、12月26日は特別開館と案内されているので、月曜をすべて同じ扱いにはできません。3

通常の単館券は8ユーロで、ディーゼル博物館も含みます。エアフィンダーツァイテンのガイドは約1時間半〜2時間、最大20人、50ユーロに入館料が加わり、早めの申し込みが必要です。予約・問い合わせは erfinderzeiten@schramberg.de、電話は +49 7422 29300。館は無料駐車場、ロッカー、バリアフリー対応を案内しています。車椅子で必要な動線や、希望言語でのガイドの可否は、申込時に具体的に確認してください。3

ディーゼル博物館:時計を動かす工場の力#

同じ旧H.A.U.地区には、1904年の電力施設に1911年の大型ディーゼル機関と発電機を収めたディーゼル博物館があります。機関は元の設置場所に残され、周囲の電気設備と一緒に見ることができます。時計の小さな歯車に対して、製造現場を支えた動力が大きな設備を必要としたことを実感できる場所です。4

ここでは「エンジンの大きさ」だけでなく、機関、発電機、配電の設備がどのようにつながっていたかを見ると、時計工場の理解が深まります。稼働実演が常に行われるとは限らないため、運転を見ることを旅の条件にする場合は事前確認が必要です。

券に含まれていても開館条件まで他館と同一とは限りません。郡の施設案内には冬季の週末中心の開館が記される一方、期間表記に空白もあります。とくに11月以降は、エアフィンダーツァイテンへの問い合わせで同日の入館可否も確かめ、開かない日は時計展示に時間を振り向ける組み方が現実的です。3 4

一日の組み方と、短い滞在の場合#

次は、テラッセンバウとエアフィンダーツァイテンの両館が開く火〜日曜に、10時から現地見学を始める例です。1月7〜31日、テラッセンバウの年末年始・ファスネットの休館日、臨時休館日は対象外です。ディーゼル博物館への立ち寄りは、別途その日の開館を確認できた場合に限ります。鉄道・バスの時刻表ではなく、展示の読解と休憩を含めた編集上の時間配分です。到着便に合わせて前後させ、歩行に不安がある場合は移動手段を先に決めてください。

現地時刻の目安行程時間を使う目的
10:00〜12:00テラッセンバウ博物館建築、時計と部品づくりを読む
12:00〜13:30昼食・旧H.A.U.地区への移動食事と移動の余裕をまとめて確保
13:30〜15:30エアフィンダーツァイテン時計階を中心に生活展示と比べる
15:30〜16:15開館していればディーゼル博物館工場の動力設備を見る
その後帰路へ。余裕と天候に応じ市街散歩接続便を優先し、展示を詰め込まない

半日しかなければ、建築・製造工程に関心がある人はテラッセンバウ、暮らしや自動車も一緒に楽しみたい人はエアフィンダーツァイテンに絞る方が、移動に追われず見られます。二館を急いで回ること自体を目的にする必要はありません。

屋外で休憩するなら、市街の「時の公園」(Park der Zeiten)も選択肢です。1885〜1886年に建てられたヴィラ・ユンハンスとその庭園は、創業者の息子エアハルト・ユンハンスの所有でした。工場、生活用品、経営者の住まいに付随する庭園を比べると、同じ時計産業を異なる立場から眺められます。公園を訪ねることと、ヴィラ内部を見学できることは分けて考えてください。7

鉄道とバスで入る#

公共交通では、ロットヴァイル(Rottweil)またはシルタッハ(Schiltach)の鉄道駅とシュランベルクを結ぶバスを使います。ロットヴァイル方面は40系統、シルタッハ方面は50系統です。郡の公式案内によれば、従来の7478系統は2023年12月10日からこの二つに分かれました。古い旅行案内の系統番号を、そのまま現在の検索へ使わないようにしましょう。6

乗車日は往路だけでなく帰路も検索し、降車停留所から各館の住所までの経路を確認してください。40と50は町と鉄道を結ぶ路線であり、二つの博物館の入口を直接つなぐ周遊バスとして扱わないことが大切です。エアフィンダーツァイテンの駐車場はディーゼル博物館・鉄道博物館への来館にも利用する配置ですが、テラッセンバウは別住所です。3 6

黒い森の周遊へ広げる際の注意#

シュランベルクの二館を十分見る日と、他の時計産地へ移る日を分けると、それぞれの違いを理解しやすくなります。とくにフルトヴァンゲンのドイツ時計博物館は、2026年10月23日時点で全面改修のため休館中で、公式FAQは再開日を未定としています。常設コレクションを見られる前提で行程に加えることはできません。別会場の「StattMuseum」の活動は、常設展の代わりに同じものを見られる案内ではなく、個々の催し・参加条件を確認する対象です。8

シュランベルクでは、段状の作業場、暮らしの時計、発電設備という三つの対象をつなぐことで、時計づくりが建築と生活を形づくったことまで読み取れます。完成品を多く見るか、ひとつの工程を深く見るかを決め、開館時間に余裕を持たせることが、この町の時計巡りを充実させます。

見学の背景になる年表#

年現地を見るための手掛かり
1861年ユンハンス創業。時計工場と周辺の部品産業が育つ出発点。1
1885〜1886年ヴィラ・ユンハンス建設。現在の「時の公園」の背景となる。7
1904年/1911年H.A.U.の電力施設建設と、ディーゼル機関・発電機の導入。4
1916〜1918年ユンハンス段状工場棟を建設。1
2016〜2018年段状棟の修復。1
2023年12月鉄道接続バスを40・50系統へ分割。6
2024年8月〜フルトヴァンゲンのドイツ時計博物館が改修休館。8

参考文献・訪問情報#

以下は2026年10月23日閲覧。開館日、料金、展示の公開範囲、交通は訪問日を指定して公式窓口で再確認してください。

  1. Junghans Terrassenbau Museum、公式案内(ドイツ語)。建築、展示、開館、料金、ガイド。英語版と開館時刻に差があるため、本文はドイツ語版を採用。
  2. Auto- und Uhrenmuseum ErfinderZeiten、Uhren。時計階と具体的な展示対象。
  3. 同館、Besucherinfos、Anfahrt。開館、冬休み、料金、ガイド、館内サービス、所在地と駐車場。
  4. Landkreis Rottweil、Auto & Uhrenwelt Schramberg – Dieselmuseum。設備の来歴、展示、冬季開館案内。
  5. Stadt Schramberg、Der Technologie- und Gewerbepark H.A.U.。地区の現在の用途と施設配置。
  6. Landkreis Rottweil、Regiobus。40・50系統、鉄道への接続、公式時刻表への入口。
  7. Stadt Schramberg、Park der Zeiten。庭園とヴィラの所有者・建築年。
  8. Deutsches Uhrenmuseum、Museum geschlossen。改修休館、再開日未定、代替活動。ドイツ語・英語・フランス語の公式FAQ。