セラミック製テンプ軸

セラミック製テンプ軸

テンプを支える小さな軸#

セラミック製テンプ軸は、機械式時計の調速機を支えるテンプ軸(天真)の少なくとも一部に、金属ではなくセラミックを用いる技術である。テンプ軸はテンプ、ひげぜんまいのひげ玉、脱進機に運動を伝える振り座などを保持し、両端の細いほぞを軸受けで支えられて往復回転する。一般的な鋼製軸では、ほぞの直径はおよそ0.06〜0.12 mmとされる。1

軸受けの摩擦を小さくするには細いほぞが有利だが、衝撃時にはテンプの慣性が細い部分に負荷をかける。耐震装置は軸受けを弾性的に動かし、軸を保護する。非磁性材料を使う狙いは磁場への影響を受けにくくすることだが、調速機には軸以外の部品もある。軸を非磁性にしただけで時計全体が磁場の影響を受けなくなるわけではない。1

材料と加工の両立#

時計用セラミックの候補には酸化ジルコニウム、アルミナ、窒化ケイ素などがある。硬く摩耗に強い材料を選ぶ一方、細い部分に生じる傷や応力集中、脆い材料の破損に配慮しなければならない。材料の名称だけで耐衝撃性や時計の精度を決めることはできず、ほぞの形、表面、軸受け、耐震装置を含めた設計が重要になる。2

鋼製軸は旋削後にほぞの表面を押し固める転圧で仕上げる方法がある。一方、時計技術百科事典Horopediaは、セラミック軸の製法として焼結した素材をフェムト秒レーザーで加工する方法を説明する。フェムト秒レーザーは非常に短いパルスを使う加工法である。素材の選択と、微細な形を繰り返し作って表面を仕上げる工程は別々の課題である。1

特許文献に見る構造#

ロレックスが2016年に出願し、2017年に公開された欧州出願EP3258325A1は、ほぞまたはその胴の一部を含む機能部分をセラミックで作る時計軸を記述する。公開請求項には、その部分の外径が0.5 mm未満という条件がある。軸全体をセラミックで作る構成も選択肢として挙げるが、すべての実施形態が一体のセラミック軸という意味ではない。2

同文献は酸化ジルコニウム系や窒化ケイ素系など複数の材料と、テンプなどを取り付ける部分、軸受けとの組み合わせを説明している。これは公開された技術上の選択肢であり、特定の市販時計の組成や製造工程をそのまま示す証拠ではない。公開出願の請求項と、後に確定した各国の権利範囲も区別する必要がある。2

別の2025年公開国際出願WO2025219458A1は、セラミック素材を高速回転させ、工具を接触させて切削する別の加工方法を提案する。例示された軸は長さ3 mm、最大径0.5 mm、ほぞ先端径0.066 mmである。これは出願の実施例であって、下記の量産品の寸法や製法を示すものではない。3

製品例:ランドドゥエラー#

ロレックスは2025年発表のランドドゥエラーに搭載するキャリバー7135について、白色セラミック製テンプ軸を公表した。同社によれば、フェムト秒レーザーで形を作り、ナノメートルの尺度で研磨する。ほぞの形状と仕上げは衝撃への対応を意図したもので、両端には改良したパラフレックス耐震装置を組み合わせる。軸受け側の可動性と板ばねによる復位も一体の設計として扱われる。4

同ムーブメントの振動数は5 Hzであるが、これは調速機全体の仕様であり、セラミック軸だけの効果を表す数値ではない。メーカーの説明は軸の正確な化学組成や、鋼製軸との比較試験値を明らかにしていない。また、上記特許出願と製品との対応を明示していない。4

年表#

  • 2016年:ロレックスがセラミック部分を持つ時計軸の欧州特許を出願。2
  • 2017年:その出願EP3258325A1が公開される。2
  • 2025年:ランドドゥエラーのキャリバー7135に白色セラミック軸が公表される。同年、別のセラミック加工法を扱う国際出願が公開される。3 4

参考文献#

1. Horopedia, The Balance Staff, 各部の役割と加工法。

2. Rolex SA, EP3258325A1, Timepiece arbor, 2017年公開、説明および公開請求項。

3. WO2025219458A1, Method for manufacturing a timepiece component, 2025年公開、製法と実施例。

4. Rolex, The Land-Dweller: Watchmaking features, キャリバー7135のメーカー説明。