Haplos年次カレンダー――月の長さをレバーで読み取る

Haplos年次カレンダー――月の長さをレバーで読み取る

二月末だけ手で合わせるカレンダー#

Haplos(ハプロス)は、ロレックスが2026年の「パーペチュアル パデローネ」に搭載した年次カレンダーの名称である。30日の月と31日の月を自動で区別し、二月末から三月への移行時に調整する。日付機構に加える送り指と年次レバー、そして月表示ディスクの裏側に設けた月のプログラムが特徴となる。1 2

「年次」は一年中無調整という意味ではない。また、製品名の Perpetual を永久カレンダーと読み替えることもできない。年次カレンダーは年に一度の調整が必要な分類であり、四年ごとの閏年まで処理する機能とは異なる。2 3

カレンダーの分類月末に行うこと
単純な日付表示31日未満の月の末に手動で修正する
年次カレンダー30日・31日の違いを処理し、二月末に手動で修正する
永久カレンダー通常の月の長さに加えて閏年周期も処理する

分類の違いは表示の数ではなく、暦のどの違いを自動処理するかにある。曜日・日付・月をすべて表示していても、それだけで年次や永久カレンダーになるわけではない。3 4

「追加2部品」は何を数えているか#

メーカーが述べる2部品は、基になる日付機構へ追加する部品である。時計全体や、曜日・月・日付の表示を動かす全構成部品の合計ではない。公式説明は、追加の送り指と年次レバーを挙げ、月表示ディスクの裏面に月の情報を持たせるとする。1

月表示と機構のプログラムを同じ部品へまとめることで、表示用の部品が判定用の部品も兼ねる。機械式カレンダーにおける「記憶」は、電子回路ではなく、回転するカムの形とその位置に持たせられる。月が変わると接触する形も変わり、追加送りの有無が切り替わる。

特許の実施例で動きを追う#

月末の判定――レバーが逃げるか、止まるか#

ロレックス出願のEP4632500A1は、日付車に取り付けた可動レバーと、それとは別軸の月カムとの接触で、追加送りを有効・無効にする構成を開示する。以下は公報の実施例の説明であり、量産品の全仕様を分解調査で確認した説明ではない。5

公報の例月カムとレバーの関係日付の動き
4月30日から5月1日カムの突起がレバーのピンを受け止める追加送りが日付車へ伝わり、通常送りと合わせて2段進む
5月30日から5月31日レバーが逃げられる追加送りでは日付車が進まず、通常送りだけで1段進む

この構成では、送り指の動きが毎回あっても、それが日付車を回すかどうかが変わる。4月末には日付車の「31」の位置を通過して翌月へ移り、5月30日には「31」を残す。公報の図6〜13はこの対比を示している。5

同じ実施例では、日付の移行に連動する中間車の指が月車を一段送り、月カムと月表示も次の月の位置へ進める。判定に使う月の情報は、月末の移行で更新される。5

瞬時送り――少しずつ蓄え、一度に使う#

関連するEP4632499A1では、ばねを持つ蓄勢装置とカムを用いて、表示を素早く切り替える。輪列から受け取ったエネルギーを蓄え、切替時に放出して日付・曜日、月末には月表示も動かす。日付と月の表示を各位置に保持するジャンパーも必要になる。6

同公報は、表示の保持トルクを下げ、月表示とカムの一体化で慣性を小さくする設計を述べる。これは、短時間に表示を動かすためのエネルギーを抑え、時計の調速系への影響を小さくするための設計上の説明である。公報の数値例を、そのまま市販品の切替時間や歩度の実測値とすることはできない。6

月の長さを判定する働きと、表示を瞬時に切り替える働きは分けて理解できる。前者は「何段進めるか」、後者は「いつ、どのように動力を渡すか」を扱っている。

採用ムーブメントと操作#

パデローネのキャリバー7190は、2025年のキャリバー7135を設計の基礎とし、5 Hzの調速系とDynapulse脱進機を採用する。Haplosはその年次カレンダー部分の名称であり、脱進機やひげぜんまいの名称ではない。メーカーは日付・曜日・月が午前零時に瞬時に変わると説明する。1

公式取扱説明書では、ケース側面の修正ボタンを付属の修正具で操作する。月は2時、日付は4時、月相は8時、曜日は10時側に配置される。日付を31日から1日へ進めると月も進む。また日付が31日のときに月を修正すると日付が1日へ動くため、必要に応じて日付を合わせ直す。表示を別々に修正できても、日付と月の連動がなくなるわけではない。2

同説明書の年次調整日は3月1日で、平年・閏年とも二月末の違いを使用者が処理する。停止後の再設定などは年次調整とは別に必要になる。2

Sarosとの違い#

ロレックスには、2012年のスカイドゥエラーで導入されたSaros年次カレンダーもある。こちらの公式説明は、4つの歯車と2つの歯数比を用いる構成を挙げる。7

Haplosの送り指・レバーによる説明とは、単純化を実現する構成が異なる。ただし「2」と「4」という数字だけでは、時計全体の部品数、加工費、耐久性、保守性を比較できない。比較には、どこまでを基礎機構とし、何を追加部品として数えているかをそろえる必要がある。両方式とも30日・31日の月を区別するが、表示や操作まで同じではない。1 2 7

開発と公表の年表#

年月日出来事と資料上の意味
2012年比較対象となるSarosがスカイドゥエラーで導入される。7
2024年4月10日EP4632499A1・EP4632500A1の優先日。5 6
2025年4月9日両欧州出願の出願日。5 6
2025年10月15日両出願のA1公開公報が公表される。5 6
2026年ロレックスがパデローネとHaplosを紹介。取扱説明書の版表示は2026年9月。1 2

EP4632499A1の発明者欄はValentine PennestriとDenis Rudaz、EP4632500A1はDenis Rudazを記す。これは各出願の発明者の表示であり、完成した製品の開発担当者全員を表す名簿ではない。5 6

分かっていることと、評価の限界#

Haplosの特徴は、月の情報を表示ディスク側に持たせ、レバーの逃げを切り替えて追加送りを選ぶ、簡潔な機械的判定にある。公式説明と公開公報を併せると、その技術的な考え方を理解できる。ただし公報には Haplos という製品名は示されず、実施例と製品の細部がすべて同一とまでは確定できない。

材料の詳細、公差、潤滑条件、長期使用後の摩耗量、他方式とそろえた条件での独立した耐久試験は、ここで参照した資料からは比較できない。部品の簡素化という設計説明と、実際の長期性能の評価は区別される。

参考文献#

閲覧日はいずれも2026年10月22日。

  1. Rolex, “New Perpetual Padellone: When times align”, 2026年、特にHaplosとキャリバー7190の節。
  2. Rolex, Perpetual Padellone — User Guide, IMR-PAD-EN-26、2026年9月、印刷頁8–9、14–20。
  3. Fondation Haute Horlogerie, “Quantième annuel”, 用語集。
  4. Patek Philippe, “Glossary”, Calendarの項。分類の説明に使用し、他社製品の構造資料としては使用していない。
  5. Rolex SA, Denis Rudaz, EP4632500A1, “Système de calendrier horloger”, 2025年10月15日公開、請求項1–5・17、図6–13とその実施例説明。
  6. Rolex SA, Valentine Pennestri・Denis Rudaz, EP4632499A1, “Système de calendrier horloger”, 2025年10月15日公開、蓄勢・表示保持の説明、図3–5。
  7. Rolex, “Saros — Why complicate matters?”, 成立年と構成の公式説明。