一本のリューズで二つの仕事を選ぶ#
鍵なし巻上げ・時刻合わせは、時計から取り外した鍵を使わず、リューズなどの固定された操作部から主ゼンマイを巻き、表示針を合わせる仕組みである。英語では keyless winding and setting、その切替機構を keyless works と呼ぶ。フランス語の古い文献では montres sans clef、巻上げは remontage、針合わせは mise à l’heure と表現する。1 2
リューズを回すと巻上げ、引いてから回すと時刻合わせになる時計では、指の回転が常に同じ歯車へ伝わっているわけではない。内部のクラッチやレバーが、香箱へ向かう経路と針へ向かう経路を切り替えている。押しボタンを押しながら回す方式、ケースを開くと切り替わる方式もあり、鍵なしという分類は「引出し式」と同義ではない。3 4
鍵なし巻上げと自動巻きも別の機能である。前者は手の力を鍵以外の操作部から入力し、後者は身体の動きなどを利用して巻き上げる。自動巻きに手巻きとリューズによる針合わせを併設できることは、現代のMIYOTA 9015の仕様と操作書にも明示されている。また、針合わせは表示を基準時刻へ合わせる操作であり、時計が進む・遅れる割合を変える歩度調整とは区別する。5 6
鍵をなくすまでの複数の道筋#
解決すべき問題は、巻上げだけではなかった#
鍵巻きでは、鍵の角穴を時計の角軸へ差し込み、手の回転を伝える。巻上げと針合わせには別の角軸が必要となることがあり、文字盤側へ鍵を差す時計もあった。鍵が摩耗する、紛失する、差込み時に文字盤を傷める、ケースを開くたびに埃が入る、といった不便を避けることが鍵なし方式の課題だった。1 3
Pierre Duboisの1849年の技術書は、往復する棒とラック、二重のラチェットと爪を用いて香箱真を回す先行方式を説明する。この仕組みでは巻上げ用の鍵は不要でも、針を回す鍵は残る。Duboisは、ブレゲが巻上げと針合わせを交互に行う機構を考案した一方、構造と製作が複雑で一般的な時計に普及しなかった、と評した。この記述は当時の技術史家による評価であり、ブレゲの全作品を一様な構造とみなす根拠ではない。1
巻上げ側の設計は、動力装置にも左右される。フュゼでは巻上げ中に円錐車を回す必要があるが、走行中にも巻上げ歯車をつなぎ続けるとその運動を妨げうる。Duboisが説明するNicoleの方式は、可動の受けに載せた歯車を押し込みながら巻き、引きながら針を合わせる。鍵のかわりに軸を付けるだけでは、巻上げ後の切離しと表示側の接続という問題が残るのである。1
Prestの現存品とPhilippeの初期機構#
Science Museum Groupが保管するJohn Roger Arnold製の1821年の時計は、Thomas Prest式の鍵なし巻上げを備える。ムーブメントには「Patent. No. 47」と署名され、ルビー製シリンダー脱進機と温度補償機構も確認されている。No.47は館が転記する時計の銘文の一部であり、この記述から原特許の番号を確定することはできない。この現存品だけでも、鍵なし巻上げの歴史を1840年代の一人から始めることはできない。7
アドリアン・フィリップ(Jean Adrien Philippe)は、巻上げと針合わせの操作を一本の軸へまとめる方式の発展で中心的な役割を果たした。Patek Philippe Museumには、1842年とされる初期機構のムーブメントP-1842と、1845年頃の完成時計P-1592がある。所蔵者のカタログは、フィリップ以前の試みやLouis Audemarsの方式を認めたうえで、薄型時計に適した初期の機構として説明する。したがって、その業績はすべての鍵なし時計の着想を独占したことより、操作と機構を実用的に統合し改良を続けた点に求められる。2
Louis Audemars工房では1838年にリューズと押しボタンを組み合わせる方式が発達したと、Audemars Piguetの工房史は記す。Patek et Czapek No.713、1844年、Louis Audemars製エボーシュという具体例も紹介されている。押しボタン式と引出し式は、単に古い方式から新しい方式へ一度に交替したのではなく、製造しやすさやケースとの組合せに応じて並行して使われた。3
フィリップの1845年4月22日付フランス特許No.1317は、博物館カタログが初期機構と対応させている。本特許の原明細書・原図は探索したが取得できていないため、番号・日付の根拠は所蔵館の解説であり、請求範囲を推定することはできない。一方、1849年のDuboisによる図と動作説明は実際に刊行された当時の資料として、初期の仕組みを詳しく示している。1 2
初期Philippe式を当時の説明から読む#
巻上げ側の入力#
Duboisのpp.374–376の方式では、溝のある操作ノブを巻上げピニオンの軸の角部へ取り付ける。軸は懐中時計のペンダント、すなわち吊り環を支える突出部を通り、ピニオンが歯冠を持つ巻上げ車を回す。そこから香箱真と一体、または別作りで取り付けたラチェット車へ力を伝え、主ゼンマイを巻く。1
重要なのは、初期の説明では入力ピニオンとその長い軸が一体として前後に移動することである。文字盤の下には、長穴と段付きねじで案内されたスライドが置かれ、ピニオンの一部がその切込みへ入る。ジャンパーばねがスライドを保持し、巻上げ位置ではピニオンと巻上げ車の噛合いを保つ。1
軸の先端は鋼製の受けで支えられ、操作ノブは金製ねじで留められる、と同書は記す。歯形も通常の細い歯の列というだけではなく、ラチェット状で、前面を丸め、後面にくぼみを設けたと説明される。ただし同書の「非常に頑丈」という評価は著者の定性的な賛辞であり、破壊トルクや耐久回数の測定値ではない。1
引くと表示側へ切り替わる#
時刻合わせには、入力軸の下端に自由に取り付けられた別体の鋼製の車を使う。この車の筒部に小さなピンを取り付け、その先を軸の平らに削った部分へわずかに突出させる。車は軸とともに回るが、軸の長さ方向には別に動ける。レバーの先端が車の周溝へ入り、表示側の中間車との噛合いを制御する。1
ノブを引くと、スライドがジャンパーばねの保持を越えて外周側へ移り、入力ピニオンは巻上げ車から外れる。同時にスライドに連動するレバーが、別体の時刻合わせ車を中間車へ接続する。ノブを左右へ回せば針が進み、または戻り、押し戻すと巻上げ位置へ復帰する。1
この説明には、現在にも通じる「軸の回転は動力、軸方向の移動は機能選択」という考えがある。しかし、軸上を滑る一つのクラッチ車が両側の歯で二経路を切り替える現代の構成と、各部品まで同一ではない。引いて合わせるという外部操作が似ていても、機構の同一性は図と動作を見て判断する必要がある。1 8
二つの香箱を同時に巻く場合#
Duboisは独立秒の時計に使う二香箱の配置も記す。一つの巻上げ車から二つのラチェット車へ力を伝え、二つの主ゼンマイを同時に巻く。しかし、独立秒の輪列を止めたまま使うと、その主ゼンマイだけはほとんど解けていない可能性がある。先に満巻きとなった側が巻止めで固定されると、もう一方も巻けなくなる。1
そこで同書は、秒用香箱に、満巻き後も香箱真を回せる切離し方式を適用したと説明する。これは二香箱を同時に巻く設計の課題を示すが、その短い説明だけから、後に特許化された滑りばねの形状を再現することはできない。入力を一本へまとめるほど、入力先どうしの負荷差と満巻き時の扱いも設計問題になる。1
現代の摺動クラッチは何をしているか#
回転する軸、滑る車、位置を保持するレバー#
現在よく見られる方式では、巻真の非円形断面にツヅミ車(sliding pinion / pignon coulant)をはめる。ツヅミ車は巻真と一緒に回転するが、巻真上を軸方向へ滑ることができる。フランス語のJourne特許は、角断面の巻真、ツヅミ車、切替を動かすバスキュール、巻真の移動を受けるティレットという構成を、従来から知られた方式として説明する。8
日本の部品用語では、巻真の出し入れを受ける設定レバーをオシドリ、その動きでクラッチ車を送るレバーをカンヌキと呼ぶことがある。英語の setting lever、yoke、setting lever spring、clutch wheel、winding pinion が別々の部品であることは、MIYOTA 9015の部品表でも確認できる。「リューズを引く」とは、巻真を単に手前へずらすだけでなく、これらの部品を連動させて機能と位置を選ぶ操作である。6
セイコーエプソンの電子制御機械式時計に関するEP1077395A1は、通常位置の巻上げ経路を、巻真31→ツヅミ車35→巻上げピニオン32→巻上げ車33→ラチェット車4と記す。第二段へ引くと、設定レバー40とカンヌキ42がツヅミ車を送るだけでなく、別のレバー43が時刻合わせ車36を分車38へ接続する。これは具体的な設計例であり、すべての時計で同じ数のレバーが必要という意味ではない。9
| 操作の役割 | 入力 | 内部で必要な働き |
|---|---|---|
| 巻上げ | 通常位置でリューズを回す | 香箱真へトルクを伝え、主ゼンマイを巻く |
| 機能切替 | 巻真を軸方向へ動かす | レバーがクラッチや歯車を移し、前の経路を外す |
| 時刻合わせ | 設定位置でリューズを回す | 表示用の輪列へ回転を伝え、針を動かす |
| 位置保持 | 引く・押す操作の後 | ばねと係止面が選択位置を保つ |
この表は上記の具体例を機能ごとに整理したものである。日付のある時計では中間位置を追加でき、9015の操作書はAを巻上げ、Bを日付、Cを時刻合わせに割り当てる。時計ごとに位置の数、回転方向、接続される機能は異なる。5 9
なぜ針を回しても走行輪列を無理に回さないのか#
巻上げ側から表示側へ入力を切り替えるクラッチと、走行輪列から針へ力を伝える摩擦結合は、別の役割を持つ。一般的な筒カナ(cannon pinion)の摩擦結合では、走行時は中心軸とともに回り、針合わせのときは摩擦を越えて中心軸とは別に回せる。これにより、針を合わせる入力が走行輪列のすべてを強制的に回すことを避けられる。10
Christopher KuenzelのUS768289A、1904年8月23日付公報は、この要件を明記し、切れ目を持つ金属筒を中心軸と筒カナの間へ入れる一つの解決策を記す。筒の弾性と摩擦で結合し、中心軸の肩が軸方向への移動を抑える。これは特定の摩擦部品の改良であり、Kuenzelが筒カナや針合わせ全体を初めて発明したという特許ではない。10
機械的に考えると、保持摩擦が小さすぎれば走行時に表示を確実に連れ回せず、大きすぎれば針合わせ時の必要トルクが増す。この関係は摩擦結合の機能から導かれるが、適正な数値は接続する輪列や針の条件によって異なる。公報は汎用の摩擦トルク、寿命、潤滑量を示していないため、特定の値をすべての時計へ当てはめることはできない。10
秒針停止も、時刻合わせの歯車とは別の仕組みである。リューズの位置に連動して停止部品を動かすことはできるが、鍵なしの機構を備えれば必ず秒針が止まるわけではない。9015の部品表には、時刻合わせ車とは別に秒針用のブレーキレバーが挙げられている。6
変種と、その設計上の理由#
ケースの裏蓋で切り替えるNardin方式#
Ulysse NardinのUS145070Aは、1873年10月17日出願、同年12月2日付公報である。ケースの裏蓋が閉じているとばねHを押さえ、リンクGとレバーFを介してクラッチDを巻上げ側へ保つ。裏蓋を開くとHが自由になり、同じリューズの回転を表示側へ切り替える。図1・2が閉じた状態と開いた状態、図3がケース内周のばねを示す。4
裏蓋を開くだけで意図せず時刻合わせへ入るのを防ぐため、別のスライドSも用意される。これはHの作用を無効にし、ケースを開けても巻上げ状態を維持する。Nardinは押しボタンや吊り環操作の欠点、埃の侵入への対策を発明の理由に挙げたが、実測の耐塵性能や現代的な防水等級を報告したわけではない。公開特許は構想と機構の証拠であり、市販個体の製作数や顧客の一覧とは別である。4
歯車の載った枠を揺らすSandoz方式#
Henri SandozのUS856183Aは1905年9月5日出願、1907年6月4日付公報である。中央で支えたヨークiの両端にピニオンm、nを載せ、枠を揺らすことで巻上げ輪列u、表示輪列vへの接続を交互に切り替える。巻真fの下端は角断面で、入力ピニオンoと回転を共有しつつ、軸方向へ移動できる。11
巻真を引くとベルクランクの腕がヨークのカム面hをたどり、枠をばねtに逆らって傾ける。次の係止面sへ入れば、使用者は引張り続けずに時刻合わせできる。ヨークの突起を入力軸受へ当てて揺動量を制限し、歯の噛込みによる損傷を避けることも公報の目的である。同じ引出し操作でも、軸上のツヅミ車を送る方式とは、選択される部品と運動が異なる。11
現代も切替機構の設計は続く#
François-Paul JourneのEP1760555A1は2005年9月1日出願、2007年3月7日公開で、文字盤側に巻上げ先がある複雑時計へ対応するため揺動式を用いる。歯車を載せたバスキュールと巻真、ねじ込みリューズの休止位置を連携させる設計である。従来方式を否定するより、香箱と輪列の配置に合わせて入力経路を変える例と理解できる。出願公開は、特許登録や特定の商品への搭載そのものを証明しない。8
RolexのDenis RudazとPierre VillaretによるUS9170563B2は、2011年6月21日の優先権を記し、2015年10月27日に登録公報が出た。巻上げと表示修正を異なる結合で制御し、位置を移る途中の巻上げ負荷や日付・曜日の不意の修正、部品と平面占有面積を課題としている。改良が対象とするのは、単に回転を伝えられるかだけでなく、切替の途中に何が起こるかという動作の確実さである。12
製作、効果、限界#
部品を作るだけでなく、二つの自由度を整える#
巻真は回転を伝えながら出し入れされる。初期Philippe式は、平らな面、別体車の小さなピン、周溝、長穴と段付きねじを組み合わせ、この二つの動きを両立させた。Sandoz式でも、角断面の軸とピニオン、枠の軸受、カム面と停止面が組み合わされる。製作では、回転する箇所を自由に保つことと、選択位置で確実に噛み合わせることの両立が必要となる。1 11
初期の資料が鋼製の車・受け、金製ねじを記すことは、個々の部品に異なる材料が使われた証拠になる。しかし、それを現代の全機種の材質や熱処理の指定へ広げることはできない。現代の部品表は交換部品の同定に役立つ一方、必ずしも合金組成、硬さ、加工公差、表面処理を公開していない。装飾されたリューズの外装材と、力を伝える巻真・歯車の材質も同一とは限らない。1 6
機構の動きから見れば、軸と穴の摺動、車の歯面、レバー先端と溝、位置保持のばねなどは、摩擦と摩耗を考えるべき接触箇所である。これは構造に基づく説明であり、各箇所へ同じ油を同じ量だけ入れる整備指示ではない。Duboisは埃が油へ混ざることを旧来方式の問題に挙げるが、鍵をなくしても潤滑と保守そのものが不要になるわけではない。1
使いやすさと時計の精度は別の指標#
鍵なし機構の直接の効果は、外付け鍵を持ち歩かずに巻上げ・針合わせができ、機種によってはケースを開く操作を減らせることにある。脱進機やテンプの周期を直接改善する機構ではないので、鍵巻きからリューズ巻きへ変えたことだけで日差が何秒減るとはいえない。また、手動巻上げの効率、耐久回数、切替力は別々の評価項目であり、一つの「性能向上率」へまとめられない。1
引出し式は機能を一つの操作部へまとめられるが、誤って選択位置が変わる可能性への対策も必要になる。押しボタン式やレバー式では、別の操作を要することが選択の明確さにつながる場合がある。Sandozの位置保持、Nardinの安全スライド、現代の複数段切替は、選択した機能を保ち、不要な機能を動かさないための異なる回答である。4 11 12
鍵なしであることは、防水であることも意味しない。リューズと巻真はケースを貫くため、その部分の密封は別に設計される。Journeの明細書はねじ込みリューズが巻真の通過部の密封を改善する既知の方式だと説明するが、それを鍵なし機構そのものの発明とはしていない。水深、耐衝撃性、耐磁性、温度特性は、各時計の仕様と試験によって評価すべきである。8
操作上の注意も機種ごとに異なる。9015のメーカー操作書は、20時30分頃から翌2時頃まで日付を修正すると翌日に日付が変わらないことがある、と説明する。これは日付機構の動作中に早送りを使う問題であり、鍵なし方式全般の共通した禁止時間ではない。5
具体作品、使用者、年表#
機構の存在と来歴を分けて読む#
| 作品・資料 | 確認できる位置づけ | 読み取りの限界 |
|---|---|---|
| John Roger Arnold、1821年、Clockmakers’ Museum No.378 / L2015-3307 | Prest式の鍵なし巻上げを備える現存品 | 針合わせ方式や世界最初の商業化までは館の短い解説で確定しない 7 |
| PhilippeのムーブメントP-1842、1842年 | 所蔵館が初期の巻上げ・時刻合わせ機構と同定 | 年代は所蔵者による同定であり、製作日記全文ではない 2 |
| Philippeの時計P-1592、1845年頃 | 初期の巻上げ・時刻合わせを完成時計として確認 | 1842年のムーブメントと別の所蔵品 2 |
| Dudley Coutts Stuartへ献呈した時計の図版、1849年刊 | Duboisの図版は1847年5月3日の献呈と鍵なし方式を明記 | 刊行物の記録であり、現存個体の現在の所在や全来歴ではない 1 |
| Patek Philippe No.4536 / P-24、1850–1851年 | 鍵なし巻上げ・時刻合わせ。1851年8月18日の引渡し先は社内のPhilippe | ロンドン博覧会でVictoriaへ贈られたことはカタログも伝承として記す 2 |
| Patek Philippe No.4719 / P-27、1850–1851年 | 鍵巻き・鍵による時刻合わせ。1851年11月30日にVictoriaへ販売 | No.4536の鍵なし機構や引渡し日と混同できない 2 |
| MIYOTA 9015 | 自動巻き、手巻き、時刻合わせ、日付早送りを併設する現代例 | 部品表と操作書は採用時計全体の防水性能を示さない 5 6 |
王侯が購入した時計の話は普及の象徴になるが、同じ顧客の複数の時計でも巻上げ方式は異なりうる。No.4536とNo.4719の対照は、名称や装飾の似た品を一つの逸話へまとめず、品番、機構、台帳の記録、伝承を分けて読む必要を示す。2
成立から現在まで#
| 年・時期 | 出来事 | 根拠と位置づけ |
|---|---|---|
| 1821年 | Arnold製のPrest式鍵なし巻上げ時計が現存 | 少なくともこの時点の実装例。世界最初とは断定しない 7 |
| 1838年 | Louis Audemars工房のリューズ・押しボタン式 | 現代の工房史による年代 3 |
| 1842年 | Philippeの初期機構ムーブメント | 所蔵館の年代同定 2 |
| 1844年 | Patek et Czapek No.713でAudemars式の採用例 | AP工房史の実物紹介 3 |
| 1845年4月22日 | Philippeのフランス特許No.1317 | 館の解説による番号・日付。原公報は未取得 2 |
| 1845年頃 | Philippeの完成時計P-1592 | 初期機構の別の現存例 2 |
| 1847年5月3日 | Dudley Coutts Stuartへの献呈時計 | 1849年図版の記載 1 |
| 1849年 | Duboisが先行方式とPhilippe式を詳述 | 初期構造を説明する当時の刊行物 1 |
| 1851年8月18日 | 鍵なしNo.4536を社内Philippeへ引渡し | Victoriaへの贈呈伝承と区別 2 |
| 1851年11月30日 | 鍵巻きNo.4719をVictoriaへ販売 | 鍵なし方式との並存 2 |
| 1860–1861年 | Philippeが巻上げ・針合わせ方式をさらに改良 | 所蔵館の人物解説が改良と複数の特許を記す 2 13 |
| 1863年 | Philippeが『Les montres sans clef』を刊行 | 館の書誌・人物解説による刊行年 2 |
| 1873年10月17日・12月2日 | Nardinの裏蓋連動式を出願・公報発行 | US145070A 4 |
| 1904年3月3日・8月23日 | Kuenzelの筒カナ摩擦結合を出願・公報発行 | 切替機構に加えて表示側の結合も改良 10 |
| 1905年9月5日・1907年6月4日 | Sandozの揺動ヨーク式を出願・公報発行 | US856183A 11 |
| 2001年2月21日 | 電子制御機械式時計の始動装置の出願公開 | セイコーエプソンEP1077395A1に巻上げ・表示の切替例 9 |
| 2005年9月1日・2007年3月7日 | Journeの巻上げ・時刻合わせ機構を出願・公開 | 香箱配置とねじ込みリューズへの対応 8 |
| 2011年6月21日・2015年10月27日 | Rolexの切替改良の優先日・米国登録公報 | 位置間の移行と省部品化を課題にする 12 |
| 2026年の公開資料 | 9015の三位置操作と部品構成を確認できる | 現在も手巻き・自動巻き・表示修正を併設 5 6 |
鍵なし巻上げ・時刻合わせの歴史は、鍵の代用品を作る段階から、複数の仕事を安全に選ぶ操作体系へ発展してきた。初期の軸移動、摺動クラッチ、揺動歯車、別のボタンやケースとの連動は、同じ目的へ向かう異なる構成である。リューズの操作が似ていても、その内部にどの経路と保持機構があるかを見ることで、技術の成立と改良を具体的に理解できる。
参考文献#
- Pierre Dubois, Histoire de l’horlogerie depuis son origine jusqu’à nos jours, Paris, 1849, pp.372–376、間の図版。ETH-Bibliothek Zürich, Rar 4744。所蔵記録・永続リンク、当該章PDF。閲覧2026-10-14。先行方式の批評と初期Philippe式の当時の説明。
2. Patek Philippe Museum, Patek Philippe Watches, Volume I, 公開カタログ抜粋、人物解説およびP-1842、P-1592、P-24、P-27の項。PDF。閲覧2026-10-14。所蔵者による実物同定と記録の解説。
3. Audemars Piguet Heritage, Manipuler le temps, AP Chronicles、特に「La clé des origines」「La couronne, conquête technique」およびNo.713の説明。フランス語本文。閲覧2026-10-14。工房資料に基づく後世の歴史解説。
4. Ulysse Nardin, US145070A, Improvement in stem winding and setting watches, 1873-10-17出願、1873-12-02付公報、図1–4・明細書・請求項1–2。公報、原公報PDF。閲覧2026-10-14。
5. MIYOTA, Cal.9015 Instruction manual, 巻上げ・時刻・日付の操作。メーカーPDF。閲覧2026-10-14。
6. MIYOTA, Cal.9015 Parts List および9015仕様。部品表PDF、製品仕様。閲覧2026-10-14。
7. Science Museum Group / The Clockmakers’ Museum, Watch with Prest’s keyless winding by John Roger Arnold, 1821年、L2015-3307、Clockmakers’ Museum No.378。収蔵品解説。閲覧2026-10-14。
8. François-Paul Journe / Montres Journe SA, EP1760555A1, Mécanisme de remontoir et de mise à l’heure pour pièce d’horlogerie, 2005-09-01出願、2007-03-07公開、従来構造の説明と図13–15に対応する動作説明。フランス語公報。閲覧2026-10-14。
9. Seiko Epson Corporation, EP1077395A1, Starting device for electromagnetic converter, and timepiece device, 2001-02-21公開、巻真31・ツヅミ車35・設定レバー40・カンヌキ42の説明、図5–6および従来例の説明。公報。閲覧2026-10-14。
10. Christopher Kuenzel, US768289A, Cannon-pinion for watches, 1904-03-03出願、1904-08-23付公報、筒カナと中心軸の結合の説明。公報。閲覧2026-10-14。
11. Henri Sandoz, US856183A, Winding and setting mechanism for watches, 1905-09-05出願、1907-06-04付公報、図1–2・明細書・請求項。公報、原公報PDF。閲覧2026-10-14。
12. Denis Rudaz, Pierre Villaret / Rolex SA, US9170563B2, Timepiece comprising a winding mechanism and at least one mechanism for correcting at least one indicator member, 優先日2011-06-21、米国出願2012-06-21、登録公報2015-10-27、背景技術・切替動作の説明。公報。閲覧2026-10-14。
13. Patek Philippe, The Story of the Founding of Patek Philippe, Jean Adrien Philippeの項。メーカー史。閲覧2026-10-14。