マスタークロノメーター認証

マスタークロノメーター認証

マスタークロノメーター認証#

マスタークロノメーター(MASTER CHRONOMETER)は、スイス連邦計量・認証機関 METAS の要件に従い、機械式時計の歩度、耐磁性、持続時間、防水性を確認する認証である。ムーブメントだけでなく、ケースに収めた完成時計も試験する。認証の名前は特定の脱進機や材料を意味しない。1 2

文字盤にマスタークロノメーターと記されたオメガの腕時計

図:マスタークロノメーターの表示があるオメガ・シーマスター プラネットオーシャン。作者:Bjc157。出典:Wikimedia Commons。ライセンス:CC BY-SA 4.0。変更:縮小・JPEG再保存。加工画像も同じライセンス。

何を認証するのか#

時計は Swiss Made の要件を満たし、ムーブメントは ISO 3159:2009 のクロノメーター基準を満たす必要がある。後者の試験は ISO/IEC 17025 の認定を受けた試験所が行う。その上でムーブメントと完成時計が METAS-N001 の試験と合格基準を満たす。規程は時計の完成時の性能と試験の管理方法を定めるもので、設計や材料を一つに指定するものではない。2

試験を受ける全ムーブメントと全時計の測定は、申請者またはその代理人の責任で行う。試験所はメーカー内でも委託先でもよい。METAS は認証機関として測定結果を統計的に監視し、抜き取り試験と品質管理の監査を行う。つまり、すべての時計を METAS 自身が個別に測定するという意味ではない。規程は測定器の校正、測定の不確かさ、記録の保存も要求する。2

10の試験サイクルと判定#

以下は METAS が公開する METAS-N001 英語版1.2(2022年承認)の説明である。10のサイクルから、停止しないこと、歩度、持続時間、防水など8つの判定項目を得る。日差は基準時計に対する時刻のずれが測定期間にどれだけ変化したかを、24時間当たりに換算した値である。2 3

試験確認すること
磁場ムーブメントを二方向、完成時計を一方向でそれぞれ1.5テスラの磁場に最低30秒さらし、動き続けるかを確認する。完成時計では磁場曝露後と消磁後の日差の差も評価する。
平均日差完成時計を約33℃と23℃、複数の姿勢に置き、4回の日差を平均する。磁場を受けた後と消磁後の測定も含まれる。
持続時間巻き上げ後、製造者が申告したパワーリザーブの時間まで動くかを確認する。
姿勢と残量六つの姿勢で短時間の歩度を測り、姿勢による最大差と、満巻きと残量約3分の1の平均歩度の差を評価する。
防水申告圧力と時計の分類に応じて加圧し、結露試験または同等の方法で確認する。

1テスラは10,000ガウスなので、1.5テスラは15,000ガウスに相当する。規程ではムーブメント試験後に消磁し、完成時計の磁場試験では磁場中に停止しないことを確認する。磁場曝露後とその後の消磁後の日差の差は絶対値で5秒/日以下が基準である。これは試験で決められた方向・時間・磁束密度についての基準であり、どの磁場にも無制限に耐えるという保証ではない。2

平均値と姿勢差#

規程1.2はムーブメントの取付寸法で三つの区分を設ける。取付直径が26mmを超える区分1aでは平均日差0〜+5秒/日、20mmを超え26mm以下の1bでは0〜+6秒/日、20mm以下の2では0〜+7秒/日である。非円形などは取付面積でも区分する。姿勢差と残量差の許容値も区分により異なる。2

例えば区分1aの四つの日差が+1、+3、−1、+5秒/日なら、その平均は+2秒/日となる。これは平均の算術例であり、他の判定項目の合否は分からない。平均が0以上でも各姿勢・各日の値が必ず0以上とは限らず、装着中のあらゆる瞬間の遅れがないことも意味しない。六姿勢の瞬間歩度はそれぞれ少なくとも30秒測定し、日差の測定区間は23〜26時間である。短い瞬間測定と実際の一日の結果は同じ量ではない。2

クロノメーターの事前試験はムーブメントに対する別の試験である。METASの案内はその平均日差を−4〜+6秒/日と説明しているが、N001の完成時計の平均は異なる手順・条件から求める。数字の幅だけで同じ測定の優劣として扱うことはできない。1 2

成立と採用#

METASとオメガは2014年12月9日に共同プロジェクトを発表し、技術要件と監視の仕組みを整えた。METASの当時の報告によれば、2015年10月21日の記者会見で最初の認証時計が紹介された。会見に出席した時計専門メディアは、そのモデルをグローブマスターと報じている。3 4

規程は条件を満たすメーカーに開かれている。例えばチューダーは自社の認証時計について、Swiss Made とクロノメーター認定済みムーブメントを前提に、二温度・六姿勢・二つの巻き上げ残量、耐磁性、防水性、持続時間を確認すると説明する。具体的なモデルや防水の申告値は各製品によって異なる。1 5

年出来事
2009前提となる ISO 3159:2009 が参照される。
2014年12月METASとオメガが共同計画を発表。
2015年10月記者会見で最初の認証時計が紹介される。
2022年12月公開されている METAS-N001 英語版1.2が承認される。

認証の読み方#

認証は、決められた時点と手順で規程に適合したことを示す。防水の加圧条件は申告値によって異なり、認証名だけからすべての時計が同じ水深に対応すると判断できない。使用中の衝撃、経年や整備後の状態も、完成時の試験結果だけでは予測できない。規程は認証途中にムーブメントやケースへ介入した場合の再試験も定める。2

参考文献#

  1. Federal Institute of Metrology METAS, Watch certification, 2026年11月2日閲覧。
  2. METAS, METAS-N001, version 1.2: Requirements for certification of movements and mechanical watches resistant to magnetic fields of 1.5 T, 2022年、pp. 4–16、2026年11月2日閲覧。英訳であり、曖昧な場合はフランス語版が優先。
  3. Marc Röthlisberger / METAS, La certification «Master Chronometer», METinfo 23(1), 2016, pp. 25–26、2026年11月2日閲覧。
  4. Magnus / WatchProSite, OMEGA presents the 1st METAS-certified Master Chronometer, 2015年10月27日、2026年11月2日閲覧。
  5. TUDOR, METAS Certification, 2026年11月2日閲覧。