ミニッツリピーター

ミニッツリピーター

ミニッツリピーター(minute repeater、フランス語では répétition minutes)は、操作したときの時刻を、時・分の打撃音に変換して知らせる時計機構である。典型的な方式では、時を低音、経過した15分を高低二音の組、最後の四半時からの分を高音で順に数える。定時に自動で鳴るソヌリや、設定時刻に鳴るアラームとは、起動する条件が違う。1 2

その核心は、時計の針が示す位置を読み取る機械と、その数を音にする機械を結び付けることにある。読み取りが正しくても、音が重なって数えられなければ役に立たない。美しいゴングを備えても、操作途中で動力が不足すれば時刻を誤って伝える。したがってリピーターは、情報の読み取り、ばねのエネルギー、動作順序、音響の四つを一緒に設計する複雑機構である。3 4

音で時刻を表す方法#

四半時方式と十進方式#

標準的な二音式では、4時38分は低音4回、15分を表す二音の組が2回、高音8回となる。「38回打つ」のではなく、38分を30分と8分に分けることで打数を減らす。12時間表示なので午前・午後は区別せず、0時は12時として読む。パテック フィリップの説明では、四半時の組は高音、低音の順である。すべての製品について二音の順や音程が同じと決めつけず、その時計の方式を確かめる必要がある。1

時を \( H \)(1〜12)、分を \( m \)(0〜59)とすると、四半時の組数は \( q=\lfloor m/15\rfloor \)、残りの分は \( r=m-15q \) であり、個々のハンマー打撃数は \( N=H+2q+r \) となる。これは音列の定義からの計算で、音量や機械効率の式ではない。最も長い12時59分は12+6+14=32打、1時00分は1打である。打数が違っても、各音を聞き分けられるテンポと区切りを保たなければならない。1

表示時刻時の低音四半時の二音組残りの高音個々の打撃数
1:001001
4:14401418
4:154106
4:3842816
12:591231432

クレドール7R11は、二音の組を15分でなく10分とするデシマル式である。4時35分なら低音4回、二音3組、高音5回となる。この方式でも報時の分解能は1分だが、15分の倍数を頭の中で足す代わりに十の位と一の位を数える。メーカーの取扱説明書に描かれた楽譜は音列の模式図であり、実際の音程や打撃間隔の指定ではない。5

似た機構との違い#

機構・呼称何を知らせるかミニッツリピーターとの区別
クォーターリピーター時と経過した四半時四半時以後の1〜14分は数えない
ハーフクォーターリピーター時・四半時に加え半四半時半四半時は7分30秒であり、7分単位の十進的な区分ではない
ファイブミニッツリピーター時と5分単位など名称だけでは音列の構成は決まらない。時・四半時・5分を順に扱う特許例もある
デシマルミニッツリピーター時、10分、残りの1分1分まで報時するが、中間のまとまりを10分にする
グランドソヌリ定時に時と四半時を自動打ち要求時の報時とは別の起動条件。リピーターと併設できる
プチソヌリ定時打ちを簡略化した方式四半時で時数を繰り返さないなど、実装ごとの音列を確認する
アラーム設定した時刻への到達単音の反復に限らず、設定時刻をリピーターの音列で知らせるものもある
à toc/ダムリピーターケースなどへの打撃を触覚でも感じる「音が全く出ない」という意味ではない。ベル・ゴングでよく響かせる方式とは異なる

四半時・半四半時を扱うブレゲの機構、5分までの報時を扱うバルベザの特許、10分区分のクレドール、ソヌリとリピーターを併設する現代製品は、それぞれ異なる設計例である。リピーターという大分類を、すべて1分報時する時計の意味で用いないことが大切になる。2 5 6 7

成立と歴史上の作品#

17世紀の繰り返し打ちと特許争い#

夜に時計の文字盤を読むには明かりが必要だった。要求したときだけ時刻を鳴らす時計は、その制約に対する解決策の一つだった。ただし夜用の時計や定時打ちも存在したので、暗闇での需要から単独の発明へ一直線に進んだと理解するより、複数の時刻確認方法が併存したと考える方が適切である。8

ウィリアム・ダーラムの『The Artificial Clock-maker』(1696年)には、紐を引いて昼夜いつでも時刻を知らせる時計をエドワード・バーロウの1676年頃の発明とする記述がある。時計史研究者ジョン・ロビーは、この記述が「要求時に繰り返し鳴らすこと」を述べるもので、現代の意味のラック打ち機構そのものの発明証明ではないと指摘した。スネイルを備えても、歯付きラックを一歯ずつ送り戻す機構を持たない初期時計があるため、両者を同一視できない。9

1687年の争いでは、バーロウがリピーター時計の独占権を求め、ダニエル・クエアとロンドンの時計師組合が反対した。クエアの時計は一度の押し操作で時と四半時を知らせ、バーロウの方式は時と四半時に別の押し操作を必要としたと説明される。特許の結果については、クエアが権利を得たとする後世の説明がある一方、ロビーは、すでに複数の時計師が製作していたため両者とも特許を与えられなかったとする。王の評価、申請に対する反対、特許の授与は別の出来事であり、「クエアが1687年にミニッツリピーターを特許化した」という説明にはならない。9 10

初期の携帯時計の具体例は、Clockmakers’ Museum所蔵のクエアNo.722である。1708〜1710年とされ、銀製の二重ケースは透かし彫りで、バージ脱進機とリピーターを備える。複雑機構だけでなく、ケースから音を外へ通す工夫や、ケース師・文字盤師を含む製作も時計の成立に関わる。11

1分報時の優先権とマッジの実物#

18世紀に1分まで読む機構が現れるが、一人の発明者と一つの年へ確定することは難しい。F.P.ジュルヌの技術解説は、1710年頃のフリードベルク製時計を最古の既知例として挙げる。一方、大英博物館のデイヴィッド・トンプソンによる所蔵品解説は、英国の最古例として「Jno Ellicott London 1961」と署名された時計を挙げ、製作番号から1738年頃と推定する。ここで1961は西暦ではない。実際の製作者がエリコット自身だったかは疑問が残り、卸製作の職人による可能性が指摘される。12 13

トーマス・マッジは重要な製作者だが、こうした先行例がある以上、1750年に1分報時を無から発明したと断定するのは適切でない。大英博物館のNo.407(1984,0301.1)は、金と革の三重ケース、ベル、押し込み式のミニッツリピーター、別系統の定時四半時打ちを備える。現在の脱進機はデュプレックスで、当初のシリンダー式から改造されている。現存状態を製作時の仕様とそのまま同一視することもできない。13

同館の説明には「London, 1755」とある一方、1757年12月26日のミゲル・スミスからマッジへの手紙も紹介される。スペイン王フェルナンド6世のために、大きな金の時計へ時・四半時・最大14分の報時を求めた注文である。トンプソンはNo.407が1757年という年代とよく合い、王の時計であった可能性を述べる。したがって1750年代の具体的な機能と宮廷需要を示す作品として扱い、現物との同定や製作年にある推定を残す。13

18世紀の報時には、ベルの響きだけでなく触覚を使うà tocの選択肢もあった。ジュリアン・ルロワのNo.3312は1750年頃のダム・クォーターリピーターとして記録され、1740年の発明を示す銘を持つ。ただし所蔵品の解説はその銘を「à bate levée」という、報時機構の空間を増す配置の発明に対応させる。ダムリピーター一般の発明日と同一視しない。Clockmakers’ Museumにも、1760年頃のムーブメントを1823年頃に別ケースへ収めたルロワのダムリピーターNo.193がある。36

ブレゲNo.115は、1799年10月21日に「Duc d’Aussana」と記される公爵へ販売されたダム・クォーターリピーターとして記録される。大きな一つのハンマーを備え、ケース側の小さなレバーで速度を調節する。これは1分報時の発明とは別の問題で、聞き方・感じ方に応じた機構の多様性を示す。14

ブレゲのゴングと複合時計#

ブレゲ社の工房史では、1783年の革新を、従来のベルに代えてばね状の発音体を使ったこととする。最初は地板を横切る直線状で、その後ムーブメントの周囲へ曲げた。ベルの立体的な高さを避けて薄型化しやすくする発明であり、最初からすべて現在の環状ワイヤーゴングだったという意味ではない。時・四半時・半四半時・分のどこまで報時するかと、何を叩いて音を作るかも分けて考えられる。6

No.2166は、1810年5月1日にゴロフキン伯へ販売されたとする時計で、通常の計時、定時打ち、要求時の報時を独立した輪列で扱う。オークション時の実物説明では、二つの大きなゴング、長いオール・オア・ナッシングのレバー、押してひねるペンダント操作が確認される。複数の音響機能が一つの時計へ併設されると、音を出す順序だけでなく、どの輪列がいつ動くかも問題になる。15

有名なNo.160「マリー・アントワネット」は、ミニッツリピーター、永久カレンダー、均時差、残量表示、温度計、独立秒などを統合した自動巻き時計である。エマニュエル・ブレゲによる工房台帳研究では、完成はアントワーヌ=ルイの指揮下の1827年。王妃のための1783年頃の注文という話は、19世紀末に記録された口承で、発注者は不明である。王妃自身の注文・受領と断定せず、長期の共同製作を要した複合時計として位置付けられる。16

現在時刻を読み取り、打数へ変える機械#

スネイルとラックの役割#

ラック・スネイル機構では、スネイルという段差のあるカムが時刻を保持し、そこへ当たるレバーの移動量が打数を定める。ラックは歯付きの部材で、カムそのものではない。スネイルの段差が時刻の区分を、ラックの戻り量が機械に残された打撃回数を表す。外観が星形の部材もあるが、時のスネイルと、それを間欠送りする星車は機能が異なる。3

F.P.ジュルヌの特許US8374057B2に記載された実施例では、分スネイル、四半時スネイル、サプライズが分針の筒カナ側から1時間に1回転で駆動される。その回転のピンが12腕の星車を送り、これと一体の12段の時スネイルが24時間で2回転する。針を読み取る電子センサーは使わず、針とカムを同じ表示系から動かして音の情報を取り出している。3

時は1〜12、四半時は0〜3、残余の分は0〜14という三つの値になる。四半時方式の分カムには、1時間の中で同じ0〜14の区分が四回必要になる。ラックの先端がカムの高い段に止まると移動は小さく、低い段まで落ちれば移動が大きくなる。ただし個々の歯形・係止位置・回転方向は実施例によって違うため、「すべてのラックに同じ数の歯がある」とは限らない。3 17

操作から停止までの力の流れ#

典型的なスライド式では、人の手でリピーター用ばねを巻き上げ、必要な打数を読み取り、輪列の係止を解除する。輪列は歯やピンでハンマーを持ち上げ、打撃ばねにエネルギーを蓄え、歯から離れたところでハンマーを落とす。ラックが基準位置へ戻るにつれて残りの打数が減り、報時が終わると機構が止まる。3 7

動作は次のように分けると理解しやすい。

  1. 操作部がばねを巻き上げ、読み取り部を解放する。
  2. ラックの先端が対応するスネイルに当たり、現在の時・四半時・分に応じた位置を取る。
  3. 打鐘側へ力を渡し、時の音を数える。
  4. 連結部材が四半時側、続いて分側へ動作を受け渡す。
  5. ラックを所定位置へ戻し、ハンマーと輪列を休止状態にする。

これは機能を整理した順序であり、すべての部品が一つずつ完全に停止してから次を動かすという意味ではない。読み取り時の動作は重なり得るため、部品の通過順を設計して衝突や誤読を防ぐ必要がある。3 4

US8374057B2の実施例では三つのラックが同じ軸に重なり、一方向に働くクリック、歯、ストッパー、固定カムで連結される。ばねの力は時ラックから四半時ラックへ、さらに分ラックへ渡り、ラックを戻す。二つのハンマーをそれぞれ一つのパレットで操作し、従来例より重なりの高さを節約することが設計目的である。11時59分を扱う図では時11打、四半時三組、分14打の流れが示される。3

ここで特許にある「positive-return」は、ただばねで押しているという一般論でなく、駆動部とラックを機械的に結んだ戻しの関係を指す。休止位置へ戻ることは、次の起動時に正しい読み取りを始める条件でもある。特許の機構説明と、すべての時計に同じ部品配置が使われるという主張は区別しなければならない。3

独立動力と共通動力#

通常の計時輪列と別のばねをスライドで巻く方式は、要求時の打鐘エネルギーをその都度用意できる。時計を動かす主ぜんまいの残量とは別に扱える利点があるが、「別ばねだから計時精度に全く影響しない」とまで一般化はできない。振動・衝撃・部品の負荷が皆無になるわけではない。3 7

クレドール7R11は反対に、直列の二つの香箱を計時と報時の共通動力源にする。りゅうずで巻き、ボタンは主として報時を起動する。取扱説明書によれば、報時一回で約3〜5時間相当の持続時間を消費する。したがって「リピーターなら必ずスライドで専用ばねを巻く」という説明は、この実装には当てはまらない。5 18

ソヌリを併設する時計では自動で何度も鳴るため、打鐘の残量、静音モード、定時打ちと要求時の優先関係なども必要になる。リピーターだけの32打を用意する問題と、一日中の定時打ちを賄う問題は、エネルギー設計の条件が違う。2

サプライズと境界時刻#

15分、30分、45分、毎正時の直後は、残りの分が14から0へ戻る境界になる。カムが連続回転する一方で読取り値は不連続に変わるため、先端が段の縁に落ちると「0分」でなく直前の14分側を読んだり、四半時を誤って数えたりする危険がある。サプライズ(surprise-piece)は、境界直後の受け面を一時的に延ばす可動部品である。4 17

1885年の特許US311270Aは、通常例では正時の四半時スネイルの長い段がまだ読取り部の正面にないため、サプライズを先へ出して不要な四半時打ちを止めると説明する。一方、その特許の別配置では四半時カムを移動させる量を変え、サプライズを不要とする。つまりその名前は、すべてのリピーターに同じ形の部品が必須だという証明ではない。17

現代でも、サプライズとラックの動作順は改良対象である。パテック フィリップのEP4071562B1は、四半時ジャンパーがサプライズへ移動するまで分ラックをブロックし、その後で解放する構成を示す。境界の受け面が整う前に分を読まないための同期で、音響増幅とは別の確実性を支える技術である。特許請求項1にこの関係が明記されている。4

オール・オア・ナッシングと操作の保護#

オール・オア・ナッシング(tout-ou-rien)は、不十分な操作で不完全な音列を出さないための仕組みである。スライドが必要位置へ達するまで打鐘を始めず、十分な巻上げと読取りが終わってから作動を許す。IWCの説明でも、操作途中でスライドを放した場合の不完全な音列を防ぐとされる。19

歴史的にはブレゲの時計で重要な役割を果たしたが、ゴングの1783年という年代を、そのまま安全装置の完成年に移すことはできない。1799年販売のNo.115と1810年販売のNo.2166は、オール・オア・ナッシングが確認される具体例である。時計ごとに部品構成が違い、発明年、現存使用例の年、後世に普及した年も異なる。14 15

この装置はすべての誤操作を防ぐ万能の保護ではない。りゅうずで時刻を変えながらラックがカムに接していると、表示系と報時系に無理な力が加わり得る。クレドールは時刻合わせと報時を同時に行えないインターロックを備える。クレドールでは最後の音の後も機構が数秒動き、ガバナー停止を確認してから操作するよう求めている。5

打鐘のテンポを整える調速器#

調速の対象は計時の速さではない#

リピーターのガバナーは、通常の脱進機とテンプの代わりに時計の時刻を保つ部品ではない。打鐘輪列の回転へ抵抗を与え、音と音の間隔を整える。時計がどれだけ正確に時を保つか、カムがどの分を読むか、何秒かけて報時するかは別々の性能である。21

ばねがほどけるままに輪列を走らせると打撃が速すぎ、聞き取りにくくなる。抵抗が過大なら報時が遅くなり、必要な動力も変わる。歯数比によって打鐘側と高速回転する調速器側を結び、ばねのトルクに対する抵抗を調整するのである。音の間を制御する部品自体の騒音も、チャイムの鑑賞に影響する。7 21

方式の違い#

方式抵抗・制御の作り方特徴と実例
噛合い深さの調整偏心支持などで輪列の噛合いを変える初期19世紀のブレゲ時計の調整例。現在のガバナーと同じ部品ではない
アンカー式末端の歯車と往復するクリック・慣性部材小型化しやすいが、チャイムに重なる作動音を伴う場合がある
遠心摩擦式回転数増大で錘付きレバーが外へ出て接触摩擦を増すバルベザの1890年米国特許に具体構造
空気粘性式回転する翼などと空気の粘性による抵抗クレドール7R11。摺動接触を使う遠心摩擦式と同じではない

アンカー式と遠心摩擦式、空気の粘性式をすべて「フライ・ガバナー」の一語で説明すると、何が抵抗を生むのか分からなくなる。専門解説に使われる名称にも揺れがあるため、仕組みと対象時計を併記する方が確実である。5 7 21

シャルル=アミ・バルベザ=バイヨのUS433225Aは、1889年5月9日出願、1890年7月29日付与である。原明細書はスイスNo.334を1889年1月8日の特許と記し、時・四半時・5分の報時を説明する。図2・3の調速器には、回転軸の腕、錘付きレバー、これを内側へ戻すばねがあり、回転が速くなるとレバーの踵が支持部の窪みの内面へ当たり、摩擦で減速する。「無音で高精度」という文言は発明者の説明であり、独立した騒音測定ではない。7

この米国公報は当時の構造を説明できる一次資料だが、スイスNo.334の原明細書・原図は確認できていない。また米国の請求項はラックや解除・連結部の組合せを扱うため、これだけで遠心調速器一般の排他的な優先権を確定することもできない。5分報時の実施例を、すべてのバルベザ製1分リピーターへそのまま移すことは避けるべきである。7

SJXの2024年の時計師による解説は、遠心調速器の腕時計での展開を、1989年のパテック フィリップRef.3979・3974と関連付ける。これは現代の専門家による歴史整理であり、全メーカーの最初の試作を網羅した原台帳ではない。両モデルはリファレンス番号で、搭載ムーブメントの系統はR 27である。21 22

ゴング、ハンマー、ケースの音響#

振動する発音体と音を外へ伝える部品#

初期時計のベルは立体的な鐘で、現代の代表的なゴングは曲げた金属線やばね状の部材である。一般的なゴングは円周に沿っていても閉じた円環ではなく、固定端と自由端を持つ。二股の音叉とは構造が違う。ハンマーの短い接触が複数の振動モードを励起し、固定部・地板・ケース・風防へ振動が渡り、空気へ音として放射される。1 6 23

ゴングが振動しても、そのエネルギーが効率よく空気へ伝わるとは限らない。時計を腕へ着けると裏蓋周辺の境界条件も変わる。音響設計では、発音体の音程だけでなく、固定の剛性、部品の結合、空間、ケースの動き、放射面を含む組立状態を扱う必要がある。小さな時計を単純に「共鳴箱」と呼ぶより、どの部材を振動させ、どこから音を出すかを追う方が実装の違いを理解できる。23 24

音程、音色、音量、余韻#

音程は主に聴覚上の高さ、音色は部分音の分布や立上がり、音量は音圧と聴覚上の大きさ、余韻は減衰の時間的な振舞いに関わる。これらは独立した一つの寸法で決まるものではない。オーデマ・ピゲのゴング特許EP2720091B1は、材料と幾何形状によって部分音の関係や減衰が変わることを説明し、局所的な形状・質量の変更を調音へ用いる。25

説明用に、ゴングの一つの振動モードを質量 \( M \)、ばね定数 \( K \)、減衰係数 \( C \) の一自由度系に置き換えると、変位 \( x(t) \) は \( M\ddot{x}+C\dot{x}+Kx=F(t) \) に従う。\( M \)はkg、\( K \)はN/m、\( C \)はN·s/m、\( F(t) \)はハンマーからの力Nである。線形・小変位という仮定の下で、無減衰固有周波数は \( f_0=(1/2\pi)\sqrt{K/M} \)。質量だけを増せば周波数は下がる方向、剛性だけを増せば上がる方向になる。24 25

これは振動の関係を説明する簡略モデルで、実ゴングの寸法を逆算する設計式ではない。曲がった発音体には複数のモードがあり、固定端やケースとの連成もある。削る作業は質量と剛性を同時に変えるので、「短くすれば高音」「硬いケースなら大音量」という単独の経験則だけで時計全体の音を予測することはできない。23 25

小さい減衰を持つ一モードなら、振幅はおよそ \( A(t)=A_0e^{-Ct/(2M)} \) と減る。長い余韻は魅力でも、次の打撃との重なりが増えるため、テンポと一緒に調整する必要がある。最大32打を聞く時計では、立上がりが鮮明で各打を数えられることと、響きが十分続くことの両方が求められる。式は各メーカーの製品値を示していない。1 24

材質の比較では、硬さ、弾性率、密度、内部損失は別の性質である。ケースの厚さと形状、ゴングの取付け、表面状態も異なる時計同士を、素材名だけで順位付けすることはできない。F.P.ジュルヌは鋼ケースを選び、パテックは通常の貴金属ケースの伝音でプラチナを難しい対象と説明するが、Fortissimoでは別の放射経路を作る。これは設計上の選択を示すもので、「金は常に悪い」「チタンは常に最良」という普遍則ではない。12 26

長いゴングと複数の音#

カテドラルゴングは、通常より長いゴングを巻いて長い響きを得る設計の呼称である。パテックの説明では2000年に提示したものを従来の二倍の長さとし、2001年のSky Moon Tourbillonへ二本を採用する。長くすれば常に大音量になるという法則ではなく、配置、支持、減衰を合わせる必要がある。1

複数の音を使うカリヨンやウェストミンスター報時では、時刻を数えることに加えて旋律の順序を制御する。パテックの2020年の年表は、レグラ公の時計に五ゴング、1920年のジェームズ・ウォード・パッカードの懐中時計に四ゴング、1933年のヘンリー・グレーブスの複雑時計に五ゴングのウェストミンスター報時を挙げる。三本なら必ずド・レ・ミ、四本なら必ず同じ音階という意味ではない。顧客ごとの時計が、ゴング数や併設するソヌリ・暦・アラームを異なる形で組み合わせた例である。20

ハンマーと再打撃の防止#

ハンマーは歯やパレットで持ち上げられ、打撃ばねで加速してゴングへ当たり、すぐ離れる。接触したままでは振動を止め、跳ね返って再度当たれば一打が二打に聞こえる。バルベザの原特許は、ハンマーを動かすばねとは別に、過走を止め戻りを与えるばねを説明している。打撃力だけを大きくすればよいわけではない。7

ジャガー・ルクルトのトレビュシェ・ハンマーは、2009年の技術年史に掲載される関節を持つ方式で、ハンマー先端の速度と打撃を改善する意図の機構である。またパテックの5750Pは通常の鋼ハンマーに代えてプラチナを使う。二つは同じ解決法ではなく、先端をどう動かすか、衝突の質をどう変えるかという別の設計である。27 26

現代の実装を比較する#

風防、音響板、別置きゴング#

ジャガー・ルクルトのクリスタルゴングは2005年の技術で、金属ゴングをサファイア風防へ直接接合して振動を伝える。名称からゴング自体がサファイア製と理解してはいけない。同社は2014年には四半時を鳴らさない時刻で不要な待ち時間を減らす仕組み、2019年には文字盤の両側へ配置するヘリカル形状のゴングも紹介する。音量の工夫と、音列の聞きやすさを保つ改良は別々に進められる。27

オーデマ・ピゲのスーパーソヌリは、EPFLとの共同開発を経て2015年に発表された技術である。従来の地板固定から、ゴングを別のサウンドボードへ取り付け、振動を直接渡す。初期のRoyal Oak Conceptではこの経路と裏蓋側の構造を用いて、腕時計の音響放射を改善した。2015年の研究開発発表と2016年の製品展開は区別される。2 28

さらに現代のCalibre 1000では、0.6mmのサファイア製膜を音響板に使い、開閉する薄い「シークレット」裏蓋と側方の開口を組み合わせる。スーパーソヌリという名称が同じでも、世代を越えてすべての時計が同じ金属板や同じ裏蓋を使うわけではない。2

クレドールの2011年発表は、姫路の鍛冶師・明珍宗理が特別に鍛造した鉄材をゴングへ使う。スプリングドライブの計時側は水晶とICで制御するが、報時側は機械的なラック・ハンマーと空気粘性調速器である。計時の電子制御をそのまま打鐘のテンポ制御と取り違えないことが重要になる。ケースはムーブメントを密封し、その外へゴングを置く二重構造で、取扱説明書の音の出口もこの発音部へ対応する。5 18

Fortissimoの機械的な音響増幅#

2021年12月のパテック フィリップ5750Pは、R 27系の輪列を基礎に、裏蓋側へFortissimo「ff」モジュールを付加した15本の限定製品である。薄い弾性支持を持つ鋼のサウンドレバーから、厚さ0.2mmの剛体のサファイア板へ振動を渡す。板は外周を張った太鼓の膜と異なり、角運動によって上下の空気を動かす。26

複合材の絶縁リムとチタンリングの四つの開口を用い、音を裏蓋とケース胴の隙間へ導く。ゴングからケース全体へ振動を広げる経路への依存を減らす設計である。電池・電子スピーカーによる増幅ではなく、手で蓄えたばねのエネルギーを音へ変える効率と放射経路を工夫する。26

公式資料は、従来品と比べ六倍の距離で聞けるとするが、これはメーカーの比較説明であり、距離が六倍だから音圧が六倍、全環境で同じ距離まで明瞭という意味ではない。公表仕様は非防水で、防湿・防塵の保護である。音の出口があることと、水中で使えることも区別しなければならない。26

薄型化と機能の統合#

F.P.ジュルヌのRépétition Souveraineは、文字盤下の薄いゴングと、重なりを減らしたラック・ハンマーの構成で、キャリバー1408を厚さ4.50mmとする。通常の二音式と異なり、時と分を同じハンマーで鳴らし、四半時には二音を使う。四半時のない時刻でも時と分の間へ間隔を設ける。外周ゴングが一般的であることは、この配置が不可能という意味ではない。12 3

ブルガリのOcto Finissimoは、2016年のGPHG出品説明でRef.102559のキャリバーBVL362を厚さ3.12mm、ケースを6.85mmとし、2017年の公式カタログでも同じ寸法を示す。この出品モデルでは断面が円形のゴングをチタンケースへ直接固定し、文字盤のインデックスと小秒表示の開口も音の伝わり方に用いる。2026年には37mm径のRef.104250も発表されている。薄さ、径、音響経路、耐水仕様を具体モデルごとに比べるべきで、別世代の寸法や仕様をまとめて一つの製品として扱わない。29 30 31

Ref.1938Pの2023年発表は、ミニッツリピーターと、設定した時刻を二つの同じゴングで鳴らすアラームを組み合わせる。スライドで巻いた後にすぐ鳴らす場合と、アラーム時刻まで保持する場合があるため、香箱と打鐘輪列を一時的に切り離し、安全にモードを選ぶ必要がある。メーカーが示す四件の特許は、一方向クラッチ、モード選択、一定ストローク、ラックの同期に関わる。グランドソヌリとプチソヌリの切替を説明するものではない。22 4

作品・系統主な設計上の選択比較時の注意
マッジNo.407、1750年代ベル、要求時の分報時と定時四半時打ち改造された脱進機と製作時を区別
ブレゲNo.2166、1810年販売複数の独立輪列、ゴング、完全操作を条件とする解除ソヌリと要求時報時の併設例
JLC、2005年以後の技術風防へ振動を直接渡すクリスタルゴングゴング自体の材質と接合先を区別
F.P.ジュルヌ1408文字盤下の薄いゴング、ラックの共通軸時・分の同じ音と区切りの扱い
クレドール7R11、2011年明珍鍛造材、共通動力、10分区分、粘性調速電子計時と機械報時は別
APスーパーソヌリ、2015年以後ゴングと音響板の直接結合現代のサファイア板を初期構造へ遡及しない
ブルガリBVL362薄いムーブメント、ケース固定、開口文字盤キャリバー厚と完成時計厚は別
パテック5750P、2021年レバーと可動サファイア板の音響増幅非防水。メーカーの比較値は独立実測ではない
パテック1938P、2023年要求時の時刻と、保持したアラーム時刻を同じ音響機構で報時起動条件と保持・切離しの制御が必要

製造、検査、使用上の限界#

機械加工と手作業の関係#

リピーターは部品を小さく加工するだけでは完成しない。ラックとカムの当たり、各ばねの力、歯とパレットの離れる位置、ハンマーとゴングの隙間、休止時の係止を組み合わせる必要がある。薄くするために部品を重ねれば、動作に必要な隙間と摩擦の管理が難しくなる。ジュルヌの薄型化特許がラックの連結とパレット数を改めた理由もここにある。3

ゴングについても、材料の名前だけで製造法は決まらない。クレドールでは鍛造材を使い、ブルガリは2016年のRef.102559で各ゴングを個別に手で成形・仕上げすると説明し、IWCは個々のゴングを手作業で作り調律する。量産機械で形を再現する工程と、組立後の音を合わせる工程は両立する。公表されていない合金比率、熱処理温度、寸法公差を、精密製品だからという理由で補うことはできない。18 19 29

EP2720091B1には、ゴング内の貫通孔や止まり孔を、レーザー切断・アブレーション、放電加工、微細加工などで作り、形状や材料を局所的に変える実施例がある。空洞のままにするものと、金・銀・プラチナを加えるものが記される。これは調音を可能にする特許の設計提案であって、スーパーソヌリの全製品がこの孔加工を採用するという証明ではない。25

APの工房史は、1875年頃のル・ブラッシュで、家や農家の屋根裏の工房がばね、輪列、ゴング、ハンマー、石を分業していたと説明する。エタブリスールが部品を集め、装飾、調整、組立、ケーシングをまとめる「エタブリサージュ」の体制である。複雑時計の製作を都市の一工房だけで完結する仕事と考えることはできない。38

19世紀の産業化にも、完成品の名と実際の機構製作者を分ける必要がある。1885年のUS311270Aは、手作り・機械製造の既存時計に報時機構を追加する別地板方式を提案し、Elgin、Walthamなどのムーブメント配置を示す。特許が目指した低価格化と、実際にどれだけ製造・販売されたかは別である。17

例えばルイ・オーデマールがLeroy & Son向けに製作した1885年頃のNo.48029は、文字盤のLeroy & Sonの署名とケースのLouis Audemarsの商標を持ち、ミニッツリピーター、三重暦、アネロイド気圧計を組み合わせる。工房名の違いを競合メーカーの名簿として並べるだけでなく、完成時計と製作工房・販売先を結ぶ個体の証拠として見ることができる。時計を小さくする技術と、複雑機構を分業で供給する仕事が並行していた例である。37

一方、APの記録では、1882〜1892年の時計・ペンダント・懐中時計1,625点の半数以上が打鐘機能を持つ。1892年のムーブメントNo.2416はAPが製作し、Louis Brandt & Frèreへ販売された13リーニュ(29.3mm)のミニッツリピーターで、現物はオメガ博物館の所蔵品である。ブランド間の供給関係を具体的な製品番号で追える例になる。2 28

調音と機能検査#

音響評価では、少なくとも低音・高音の分離、各音の立上がり、余韻、音の区切り、調速器の作動音を分けて聞く必要がある。測定するなら距離、時計の向き、装着の有無、室内の背景騒音、測定器の条件もそろえる。メーカーの「美しい」「大きい」という評価を、それだけで共通の試験規格や他社比較へ変えることはできない。23 24

打数の確認は、最大32打と最小1打だけでなく、14分から15分、29分から30分、59分から正時のようなカムの境界も重要になる。音の間を飛ばす機能がある時計では、四半時ゼロの時刻も別の条件になる。これはスネイルとサプライズの働き、各社の間隔短縮機構から導かれる機能上の確認点であり、全メーカーに共通する公開検査手順を引用したものではない。4 27

パテック フィリップは、出荷する各ミニッツリピーターをティエリー・スターンが聞いて承認する工程を公開する。聴感による最終判断は、数値を一つ測れば完成する製品ではないことを示す。ただしこれは同社の品質管理の説明であり、どのブランドでも経営者が全数を聞くという一般化はできない。1

残量、衝撃、防水、整備#

打鐘に使えるエネルギーが足りなければ、正しい回数を読み取っていても途中停止が起こり得る。共通動力のクレドールは十分な残量で操作するよう求め、打鐘中の巻上げ・時刻合わせを制限する。機械的報時には表示と約1分の差が生じる場合もあると説明するため、計時側の月差仕様と、音列の読み取り誤差を混同しない。5

可動するラック、ハンマー、長いゴングを備えるため、強い衝撃や振動は避ける必要がある。ゴングが近接部品へ触れれば響きが変わり、機構に干渉すれば動作も変わる。薄型化では静止時の収まりだけでなく、振動中・打撃中に必要な空間も設計条件になる。5 25

防水もリピーター全体の一つの固定特性ではない。5750Pは非防水、ブルガリのRef.103669の現行説明は50m防水。保護条件は同じ名称の系列でも異なり得る。クレドールの二重ケースの説明も、ムーブメントの保護と外側の発音空間を区別する。別製品の保護構造を理由に、任意の時計を水中で使えると考えてはいけない。18 26 30

潤滑・摩耗・汚れも輪列やレバーの作動に関係する。クレドールの説明書は、複雑な機構を長く機能させるために分解洗浄、注油、調整を含む定期点検を案内する。これはゴングへむやみに油を塗るという意味ではなく、どの軸・接触部をどう整備するかはそのムーブメントの指定に従う。製品ごとの操作説明と保守条件が、複雑機構の実用を支えている。5

腕時計化、顧客、現代の研究#

実用品から鑑賞する複雑機構へ#

音による報時は視認に頼らない時刻確認を可能にする。ただし高価な複雑時計が、過去の視覚障害者に広く普及したことまで証明するものではない。スペイン宮廷の注文やゴロフキン伯への販売は具体的な顧客の例であり、視覚障害を持つ20世紀のラルフ・ティーターが所有した時計は、利用者の条件と音による報時を結び付けて考えられる具体例になる。13 15 20

腕時計化には、機構の小型化だけでなく、響かせる空間の縮小、腕への接触、衝撃への露出、操作部とブレスレットの配置という制約が加わる。オメガが1892年の時計を「最初のミニッツリピーター腕時計」と呼ぶ説明と、「最初期の一つ」とするAP Chroniclesの表現は、具体的な共同製作記録と分けて読むことができる。28 32

パテックの1916年のNo.174603は、同社の最初のリピーター腕時計だが、5分リピーターである。メーカーの2020年の年表では、視覚障害を持つ自動車技術者ラルフ・ティーターへのミニッツリピーター腕時計を1924年に挙げる。これは1分報時の例で、一般の「最初の腕時計」や「世界で最初のリピーター」と混同すべきではない。1989年には自社開発のR 27を投入し、Ref.3979・3974やCalibre 89を通じて音響複雑機構の再展開を進めた。再展開があったことは、以前の全メーカーで生産や技能が完全に絶えていた証明ではない。33 20 1 22

大きな懐中時計では、ヴァシュロン・コンスタンタンのReference 57260が2015年に57機能を組み合わせた。ウェストミンスターの報時、アラーム、夜間の自動静音などを持つ個別作品である。「腕時計」ではなく、複雑機構を広い空間へ統合した例として比較する方がよい。多機能という数だけでは、音列の読み取りや響きの良さは説明できない。34

計算モデルと実機の境界#

セルジュ・シャロンの2018年COMSOL Conference Lausanne発表は、ゴングの環状方向のモードと曲げモード、底板、組立状態を解析し、試験と計算を照合する方法を示す。材料と境界条件を設定し、基準部品でモデルを調整してから組立全体へ進む。ゴング単体の周波数だけで時計の外へ届く音を評価しないという考え方を具体化した研究である。23

2025年のR. RozsnyoとG. Simonnotの会議論文は、簡略化した時計の機械振動を、境界要素法(BEM)で外部の音場へつなげる。有限要素法(FEM)で広い空気領域までメッシュ化する方法と比較し、BEMでは外部音響の境界を扱うことで計算負荷を減らす。さらにBEMの結果で深層ニューラルネットワークを学習させ、ハンマー位置の評価を速くする代理モデルを作る。24

これは機械学習がリピーター研究へ入った実例だが、実時計をセンサーで聞きながらリアルタイムに自動調律する製品の実証ではない。同論文は簡略形状・仮定による限界を明記し、3次元の完成時計や追加の物理効果への拡張を今後の研究とする。職人の聴感評価、原特許にある部品設計、数値モデルの結果は、それぞれ異なる根拠として扱う必要がある。24

ミニッツリピーターの現代的な意義は、暗所の時刻確認に加えて、機械が表示を読み、順序を保ち、手で与えたエネルギーを聞き分けられる音へ変える過程を鑑賞できることにある。良い設計は音量だけでなく、正しい打数、明瞭な区切り、操作の確実性、響き、整備可能性を一つの時計で成立させる。3 4 1

発展の年表#

年代出来事・具体例資料の範囲
1676年頃ダーラムがバーロウに帰属する紐引き式の繰り返し報時1696年の記述とロビーの史料研究。ラック打ち一般の発明年とはしない。9
1687年バーロウの特許申請にクエアと時計師組合が反対操作方式の比較。特許授与の記述は後世の説明間で相違。9 10
1708〜1710年クエアNo.722の製作年代銀製二重ケースの現存リピーター。11
1710年頃フリードベルクの最古の既知ミニッツリピーターという説明F.P.ジュルヌの歴史解説の帰属。世界初の発明者は示さない。12
1738年頃エリコット署名No.1961の推定年代英国の最古例とする博物館解説。番号による年代推定、実製作者は不明。13
1752年7月・1757年12月ミゲル・スミスがマッジをスペイン宮廷へ推薦し、報時時計を注文博物館解説所収の書簡。No.407との同定は可能性。13
1750年代マッジNo.407、要求時分報時と定時四半時打ち同館の作品解説は1755年、書簡照合は1757年を論じる。13
1783年ブレゲのばね状ゴング工房史。直線状から外周に曲げる形へ発展。6
1799年10月21日ブレゲNo.115を「Duc d’Aussana」と記される公爵へ販売à toc、四半時、完全操作を条件とする解除の実物例。14
1810年5月1日ブレゲNo.2166をゴロフキン伯へ販売独立輪列のソヌリ・ミニッツリピーター。15
1827年No.160の完成工房台帳研究。王妃自身の発注としない。16
1885年1月27日US311270A付与別地板の報時機構、スネイルとサプライズの説明。17
1889年5月9日/1890年7月29日バルベザのUS433225出願/付与遠心摩擦調速と5分報時。スイスNo.334の引用もある。7
1892年AP製No.2416をLouis Brandt & Frèreへ販売13リーニュのミニッツリピーター腕時計、オメガ博物館所蔵。28
1916年パテックNo.1746035分報時の腕時計。1分報時と区別。33
1924年パテックのミニッツリピーター腕時計をティーターへ販売とするメーカー年表2020年の同社年表。後の「1920年代」という説明より細かい日付帰属。20
1989年パテックR 27、Ref.3979・3974、Calibre 89同社の複雑報時の再展開。22 21 1
1994年JLC Reverso Minute Repeater矩形ケースに合わせた報時キャリバー。27
2005年JLCクリスタルゴングサファイア風防への直接接合。27
2008年F.P.ジュルヌRépétition Souveraineの受賞記録、薄型化特許の優先日製品系統の存在と特許日を区別。35 3
2009年JLCトレビュシェ・ハンマー関節付きハンマーの技術年史。27
2011年3月24日クレドール7R11の発表12月下旬発売予定とされた。2006年のソヌリとは別製品。18
2014年JLCの四半時ゼロでの無音間隔短縮報時の間を改善する技術。27
2015年/2016年APスーパーソヌリ技術発表/製品展開EPFL共同研究とサウンドボードの設計。2 28
2015年ヴァシュロンReference 5726057機能の懐中時計、ウェストミンスター報時。34
2016〜2017年ブルガリOcto Finissimo Répétition Minutes2016年Ref.102559出品、翌年公式カタログ掲載。BVL362厚3.12mm、時計厚6.85mm。29
2018年シャロンの音響モデリング発表ゴング・底板・ケースと実験比較。23
2019年JLCのヘリカル形状ゴング文字盤の両側に発音体を配置する説明。27
2021年12月パテック5750P Fortissimoレバー・サファイア板・放射経路、15本限定。26
2023年11月パテック1938Pミニッツリピーターと設定時刻を報時するアラーム。22
2025年BEM・深層学習代理モデルの研究発表簡略化モデルの研究で、実機自動調律の製品実証ではない。24
2026年ブルガリ37mm径Ref.104250の発表既存の薄型系統を小径化する現代例。31

参考文献#

資料の立場は、原特許、所蔵品の記録、当事者の製品説明、史料研究、数値解析の研究を区別している。特許中の実施例は製品全般の仕様とは限らず、メーカーの音響評価は独立した比較測定とは限らない。以下の閲覧日はすべて2026年10月13日。

  1. Patek Philippe, The Patek Philippe Sound。音列・最大打数・ゴング・検査・顧客史。

2. Audemars Piguet, The art of Chiming。報時の分類、スーパーソヌリ、Calibre 1000、製作記録。

3. François-Paul Journe / Montres Journe, US8374057B2, Minute-repeater timepiece。優先日2008年4月4日、米国付与2013年2月12日。Description、図1〜4の部品対応、Claims。

4. Patek Philippe, EP4071562B1, Striking mechanism and timepiece comprising same。原語フランス語と英訳、分ラックのブロックとサプライズ、請求項1。

5. セイコー、クレドール7R11取扱説明書・ご使用方法、PDF英語版。日本語pp.6–7、19–24、英語pp.50–51、63–68、85。動力・音列・機構・操作と整備。

6. Montres Breguet, Invention du ressort-timbre et dessin des aiguilles et chiffres Breguet。1783年、ゴングの形態変化と報時区分。

7. Charles Barbezat-Baillot, US433225A, Repeating-watch、1890年7月29日付与。冒頭、遠心調速器、図2・3・6、請求項1・2。スイスNo.334の原文全頁とは区別。

8. Jane Desborough, The Changing Face of Time、博士論文、2016年、pp.136–138。夜用時計と四半時報時の用途・併存を論じる史料研究。

9. John Robey, The truth about Barlow、Clocks, 2011年2月、pp.29–33。ダーラム1696年p.106の頁画像再録、特許申請と初期機構。

10. Fondation Haute Horlogerie, Daniel Quare。クエアへ1687年の特許権を帰属する後世の説明。Robeyとの相違を本文に示す。

11. Science Museum Group / Clockmakers’ Museum, Silver repeating watch by Daniel Quare, L2015-3179。No.722、1708〜1710年、現物の材質・構造。

12. F.P.Journe, Répétition Souveraine, Calibre 1408。フランス語技術説明とTémoignage、1710年例の歴史説明、ゴング・ハンマー・薄型構成。

13. British Museum, Thomas Mudge minute-repeating clock-watch, 1984,0301.1。DescriptionとCurator’s comments全文。David Thompson, Watches, 2008, pp.74–75の解説、エリコットNo.1961、スミスの書簡。

14. Antiquorum, Breguet No.115, lot 310、1996年10月12日。1799年販売、à toc、速度調整と安全機構の実物解説。

15. Antiquorum, Breguet No.2166, lot 532、2003年4月12日。1810年販売、複数輪列・ゴング・安全レバーの実物解説。

16. Emmanuel Breguet, The “Marie-Antoinette” watch No.160、Quai de l’Horloge, no.10。製作台帳に基づく研究と、発注口承の区別。

17. US311270A, Repeating attachment for watches、1885年1月27日付与。Description、サプライズ、別地板とムーブメント配置、請求項。

18. セイコーウオッチ、クレドール ノード スプリングドライブ ミニッツリピーター発表、2011年3月24日。7R11、明珍材、製作工程・空気粘性調速・二重ケース・共通動力。

19. IWC, Minute repeater。ゴングの製作・調律、tout-ou-rienの製品解説。

20. Patek Philippe, Grande Sonnerie Ref.6301P press release、2020年、英語本文p.8「Key dates」。ティーター、レグラ公、パッカード、グレーブスの報時時計。URLの言語ディレクトリと本文言語を区別。

21. Noa Page / JX Su, Governors of Minute Repeaters, Sonneries, and Other Striking Watches、SJX Watches、2024年7月17日。時計師の専門解説、アンカー・噛合い深さ・遠心調速の歴史整理。

22. Patek Philippe, Minute Repeater Alarm Reference 1938P-001、2023年11月、pp.1–4。R 27の開発年、アラーム統合、四件の特許番号と製品対応。

23. Serge Charron / Kallia Charron, Acoustic modeling of a Minute Repeater、COMSOL Conference Lausanne 2018、発表資料pp.4–6、9–12、16–22。ゴングのモード、組立モデル、実験比較。

24. R. Rozsnyo / G. Simonnot, Acoustic Optimization of a Minute Repeater Watch Using BEM and Surrogate Models、COMSOL Conference Amsterdam 2025、pp.1–6。機械・音響モデル、代理モデル、比較結果と限界。

25. Audemars Piguet, EP2720091B1, Gong for striking-work device of a timepiece。フランス語Descriptionと英訳、孔加工・材料・振動、請求項1–13。

26. Patek Philippe, Advanced Research, Ref.5750、2021年12月、pp.2–4・7。増幅・放射構造、性能説明、特許番号、非防水仕様。

27. Jaeger-LeCoultre, Minute Repeater Caliber。1994、2005、2009、2014、2019年の技術年史。

28. Audemars Piguet, The epic AP saga、AP Chronicles。1892年No.2416の記録、2015年RD#1と2016年の展開。

29. Bulgari, Haute Horlogerie Catalogue、2017年、PDF pp.6–8。併せてBulgari, Octo Finissimo Minute Repeater, GPHG、2016年Ref.102559のメーカー出品説明、Description・Movement・Case and dial。寸法、開口文字盤、ゴング固定・手製工程、BVL362。

30. Bulgari, Octo Finissimo Watch, Ref.103669。現行Ref.103669の寸法・素材・50m仕様。ゴングの手製工程と直接固定は2016年出品モデルの資料29に帰属。

31. ブルガリ・ジャパン、「オクト フィニッシモ」Watches & Wonders 2026、2026年。37mm径Ref.104250の当事者発表。

32. OMEGA, World’s greatest Olympian unveils a world’s first in watchmaking、2022年10月26日。1892年時計を世界初とする当事者発表。

33. Patek Philippe, Museum Tour、Patek Philippe Magazine, vol.4, no.12。1916年No.174603/Inv.P-594の所蔵品説明。

34. Vacheron Constantin, Reference 57260。2015年作品、57機能、ウェストミンスター報時・アラーム・夜間静音。

35. F.P.Journe, Prix 2008。2008年10月、Répétition Minutes Souveraineの受賞記録。

36. Antiquorum, Julien Le Roy No.3312, lot 322、2009年3月29日、実物と1740年銘の解説。Science Museum / Clockmakers’ Museum, The Nelthropp Collection、PDF p.11、item 20 / Museum No.193。原蒐集カタログの年代と現代の補正を区別。

37. Christie’s, Louis Audemars made for Leroy & Son, No.48029、2011年11月14日。現物の署名・商標・機構、販売先と製作工房の対応。

38. Audemars Piguet, Avant 1875、AP Chronicles、2025年。冒頭「Le Brassus en 1875」、地域の部品製作とÉtablissageの説明。